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健保ニュース 2019年6月上旬号

野党合同で政策懇談会
健保連
将来展望持てる改革を
「2022年危機」への対応が不可欠

健保連は5月28日、衆議院議員会館で、立憲民主党、国民民主党、社会保障を立て直す国民会議の各所属議員との政策懇談会を開催した。これまで立憲民主党、国民民主党とそれぞれ2回ずつ政策懇談会を開催してきたが、社会保障を立て直す国民会議との懇談会ははじめて。

今回の政策懇談会は初の合同開催となり、代表世話人を務める立憲民主党の海江田万里衆議院議員、国民民主党の岡本充功衆議院議員、羽田雄一郎参議院議員をはじめ、社会保障を立て直す国民会議の広田一衆議院議員ら衆参の国会議員20名が出席した。

冒頭、健保連の河本滋史常務理事は、団塊世代が75歳に到達し始める2022年から後期高齢者医療費が急増して「2022年危機」が顕在化すると指摘。健保組合はこれまで労使一体となって効果的な保健事業を展開してきたが、高齢者医療への拠出金負担がさらに重くなれば多くの組合が解散に追い込まれるとし、高齢者医療制度をはじめとする医療・医療保険制度改革の早期実現が必要だと強調した。

海江田衆議院議員は、団塊世代の一員として以前から2022年問題を指摘してきたとして、「危機はより迫っている。ピッチを上げて議論しなければならない」と述べ、改革に向けた意欲を表明した。社会保障を立て直す国民会議の野田佳彦前首相は、社会保障改革のペースが停滞していることに懸念を示し、世界に冠たる誇るべき国民皆保険制度を維持していくためには社会保障改革の実現が急務だと述べた。

意見交換では、はじめに、健保連の田河慶太理事が2019年度の健保組合予算早期集計結果を説明。2022年には後期高齢者が急増し、義務的経費の50%以上を高齢者医療に拠出する組合が半数を超える見込みだと述べ、「2022年危機」への対応が不可欠であると訴えた。また、今通常国会における健保法等改正法案の衆・参厚生労働委員会の附帯決議に健保組合関連の項目が複数盛り込まれたことについて謝意を示した。

幸野庄司理事は、5月15日の中医協で保険収載が決定された白血病治療薬「キムリア」(1回約3350万円)など、高額薬剤の保険適用に対する国民の関心が高まっているなか、同日に健保連と全国健康保険協会の連名で公表した「保険給付範囲の見直しに向けた意見」を紹介した。革新的で高額な新薬を保険適用しながら皆保険制度を維持していくためには、公的医療保険の給付を個人が負担しきれないリスクに重点化し、軽症疾患用医薬品等の除外を含め、給付範囲の見直しを検討することが必要として、健保連の主張に理解を求めた。

参加議員からは、「健保組合の財政は深刻な状況にあるが、健保組合が解散を判断する要素は何か」との質問があり、河本常務理事は、(自組合の保険料率の比較対象として)協会けんぽの平均保険料率である10%が大きな要素となるが、10%を超えても健保組合として頑張っている組合もあると説明。一方、「先行きに対する見通しがなければ限界を感じることもある」とし、将来の展望が持てる改革の実現が極めて重要だと述べた。

また、高額薬剤による財政影響について、▽今後も高額薬剤が登場していくなかで、軽症用医薬品の給付除外だけで保険財政が維持できるのか。個々の健保組合における財政影響は大きいのではないか▽製薬企業が見込んでいる希少疾病の年間患者数は極端に少ないが、保険者団体として検証すべきではないか─との意見も上がった。

これに対し幸野理事は、多くの国民が使用する軽症疾患用医薬品をスイッチOTC化する財政効果は大きいと説明。個々の組合における高額薬剤の影響については、健保連において健保組合間での再保険事業(高額医療交付金事業)を行いリスクカバーしているが、「前期高齢者が1人でも高額薬剤を使用すると前期高齢者納付金に跳ね返り、拠出金が何倍にも膨らむ可能性がある」とし、現行の前期高齢者納付金算定式の問題点に言及した。

結びのあいさつに立った岡本衆議院議員は、「本日出された課題はいずれも重要な論点になる。これから先も『保険者機能』がキーワードになっていくなかで、さらに議論を深めていきたい」と述べて、社会保障改革に継続的に取り組む考えを示した。

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