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健保ニュース 2019年5月下旬号

健保連が給付範囲見直しへ協会けんぽと意見書
軽症薬を適用除外か償還率引き下げ
まずは市販品類似薬を早急に検討

健保連は薬剤費の膨張を抑えるため、全国健康保険協会と共同で「保険給付範囲の見直し」に向けた意見を取りまとめた。軽症疾患の治療薬について、保険適用の対象から除外したり、保険償還率を通常より低く設定することが柱。革新的で高額な新薬が相次ぎ登場するなか、薬価の引き下げや安価な後発医薬品の普及だけでは保険財政の危機を回避できないと判断し、まずは市販品類似薬に焦点を当てた検討を関係審議会で早急に開始するよう求めた。個人で費用をまかないきれない重症疾患の治療薬は、共助の仕組みである保険制度の責務として、引き続き確実に給付対象とする。健保連の幸野庄司理事と全国健保協会の吉森俊和理事が被用者保険2団体を代表して15日、記者会見を開いて発表した。

軽症疾患の薬剤給付は、長らく論点に浮上しては消える懸案の課題と言える。健保連は過去にも社会保障審議会の医療保険部会などで、主成分が一般薬に転用された「スイッチOTC薬」などの市販品類似薬に関し、償還率引き下げや給付除外を求めたが、医療関係者などの同意が得られず見送られた経緯がある。

中央社会保険医療協議会では支払側の要望が取り入れられ、栄養補給だけを目的とするビタミン剤処方、うがい薬の単独処方、湿布薬の大量処方など、市販品類似薬の算定を徐々に制限してきた。前回の診療報酬改定では健保連が保湿剤の美容的使用を問題視し、全面解決には至らなかったものの、社会の関心を集めた。

これらの診療報酬による対応は、医療資源を効率的に活用するための措置ではあるが、薬剤費への影響は限定的で、そもそも保険制度にそぐわない不適切な使用を是正する意味合いが強く、財政面に主眼を置いた議論とは視点がやや異なる。

経済財政諮問会議は昨年末、新経済・財政再生計画の改革工程表を策定した。このなかで、給付と負担の見直しに関する課題のひとつとして、改めて薬剤自己負担の引き上げを位置づけ、来年の骨太方針に向けて「市販品と医療用医薬品との間の価格のバランス等の観点から、引き続き関係審議会において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる」とした。

今回の共同意見は、団塊世代が75歳以上になり始める3年後から、医療保険財政が危機的な状況に直面することを意識したもので、薬価史上最高額の再生医療製剤「キムリア」の登場を契機として、新改革工程表を踏まえた議論の先陣を切った。

2団体は今後、軽症疾患に対する薬剤給付のあり方を財政的な観点から本格的に検討し、将来的にフランスのように保険償還率の多段階化も視野に入れ、当面は市販品類似薬の給付を見直したい考えだ。

幸野理事
保険給付の重点化
「今、舵を切るべき」

幸野理事は記者会見で、革新的な高額薬剤について「患者の命を救う医薬品の保険収載は国民が待ち望むもの。今後も相次ぐことは間違いないが、それ自体は必要なこと」としたうえで、「薬価制度の抜本改革で高額医薬品に対応したが、これだけでは限界がある。医薬品の保険給付範囲のあり方を根本的に見直す時期に来ている」との認識を示した。

C型肝炎の完治薬「ソバルディ」で高額薬剤問題が顕在化し、特例再算定を創設して以降、がん免疫療法剤「オプジーボ」を期中に緊急値下げし、昨年度の薬価制度改革で四半期再算定を導入したほか、今年度からは費用対効果評価を本格化するなど高額薬剤の対策は前進した。

その一方で、軽症疾患用薬の対応が遅れていることから、「今の公的保険制度は再生医療製品から、店で購入できる薬と同様の効果の湿布薬、ビタミン薬、保湿剤、花粉症治療薬まですべて同等にカバーされているのが現状」と指摘。再生医療製品などの登場を踏まえ、「医薬品の概念が変わってきているのであれば、制度も時代に適合したものに見直し、公的医療保険は個人が負担しきれないリスクに重点化するという方向に今、舵を切るべき」と主張した。

世論に対しては、「国民皆保険制度を将来にわたり維持していくために、提言の趣旨を理解してもらいたい」とした。「セルフメディケーションで市販品を上手く活用するという、受療行動を変えることも医療費削減につながる」とも述べた。

このほか幸野理事は、次期の定時診療報酬改定に向けた新たな個別課題として、花粉症治療薬を取り上げたい考えを説明した。

吉森氏は、「保険が共助であるということから言えば、大きなリスクと小さなリスクをどうマネジメントしていくかが保険の役割」とし、「日本の宝である国民皆保険制度を守るために、高額薬剤が登場している今、ここで保険者としてできること、国民・患者として考えていかなければならないことを提言した」と話した。

「保険給付範囲の見直し」について(PDF)

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