対談・イベントレポート
イベントレポート
医療費適正化へ向けて「日本健康会議」が発足
健保連・大塚会長が「2020年宣言」を発表
2015年7月10日、国民の健康寿命の延伸と医療費の抑制を目指した「日本健康会議」が発足しました。日本健康会議は、健保連や経済団体、連合、日本医師会、全国知事会など19団体が参加。同日、東京・日本橋で開催された発足式には、各界の関係者約1000人が参集しました。
会議の冒頭、日本商工会議所の三村明夫会頭が主催者挨拶および同会議の趣旨説明を行いました。また、健保連・大塚陸毅(むつたけ)会長が、2020年に向けて8つの具体的な数値目標を掲げた活動指針「健康なまち・職場づくり宣言2020」を発表。日本医師会の横倉義武会長は、今後の取り組みについて方針を示しました。
日本商工会議所 三村 明夫 会頭
7月10日に東京・日本橋で開催された「日本健康会議」の発足式では、冒頭、日本商工会議所の三村明夫会頭が、同会議を「高齢化と生活習慣病の重症化が進む日本において、健康寿命の延伸と医療費の伸びの適正化を図るため、経済界・医療界・保険者・自治体・学会が垣根を超えて連携し、国民運動として解決を図ることを目的に組織されたもの」と位置づけ、「世界に冠たる国民皆保険制度を維持するため、厚生労働省や経済産業省などと協力し、予防・健康づくりにおけるさまざまな取り組みや、ICT(情報通信技術)を駆使した医療費削減を実現している自治体など、先行する好事例について、この会議を通じて広く周知し、横展開を図ることで健康寿命の延伸と、医療費の適正化を同時に実現するために、具体的に行動を開始する」と同会議の趣旨を説明しました。
健保連 大塚 陸毅 会長
また、健保連の大塚陸毅会長は、次世代につなぐ健康づくりを持続させ、さらに発展していくために策定した「健康なまち・職場づくり宣言2020」を発表。
このなかで、大塚会長は、●健保組合等の保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上とする、●加入者自身の健康・医療情報を本人に分かりやすく提供する保険者を原則100%とする、●すべての保険者が後発医薬品の利用勧奨など、使用割合を高める取り組みを行う――など8項目の具体的な活動内容を宣言しました。また、「保険者・経済界・医療界・自治体・学会など、それぞれの役割は違うが、日本国民の健康を願う思いは同じ。宣言の内容や数値目標は、政府とともに連携をとりながら推進し、2020年までに実現を目指す」と述べました。
日本医師会 横倉 義武 会長
続いて、日本医師会の横倉義武会長は、2020年宣言の実現に向けて「9つのワーキンググループを設置し検討をすすめ、検討を得て実施する取り組みについては、わかりやすい形で情報の共有を図り、先駆的な取り組みを全国に広めていく」と今後の方針を示しました。また同会議について、「医療者、保険者、経済団体、有識者が一体となって国民の健康を支えるという画期的な取り組みである」と述べ、「すべての国民の健康寿命の延伸にむけて、志を1つにともに邁進していきましょう」と力強く語りました。
来賓として出席した塩崎恭久厚生労働大臣は、「急速な少子高齢化の進展、そして経済情勢の変化のなかで、次世代に国民皆保険という貴重な医療保険システムを発展させながら引き継いでいくためには、医療技術などの進歩を踏まえた医療の質の向上を図るとともに、予防・健康づくりによる国民の健康寿命を延伸させることが重要である。各界のリーダーが集う日本健康会議は画期的であり、厚生労働省としても健康先進国を進める一環として、強力に支援したい」と述べました。
発足式終了後、記者団からの質問に対し、日本医師会の横倉会長は「高齢化で疾病率は上がるが、国民皆保険を破綻させないようソフトランディングで行う必要がある。医療費適正化は、国民皆保険を守るという点では関係者の利害は一致しているため、すべての国民が行うべきであり、医療者が自分たちの利益の追求ばかりしていては駄目だ」と強調。また、同会議の事務局をつとめる渡辺俊介氏(元日本経済新聞論説委員)は、「2020年宣言の達成に向けて、速やかに人選を行い、ワーキンググループを立ち上げる」と述べました。9月以降、順次ワーキンググループを開催し、具体的な対応策を検討する予定。