けんぽれんの広報
健康保険法100年特別対談企画
これからも人と社会を支える
健康保険制度
働く人とその家族が病気やけがに見舞われたときなどに保険給付を行う健康保険制度。その制度について定めた「健康保険法」が、制定100年を迎えました。これを記念して、健保連の佐野雅宏副会長と、女優・タレントとして活躍する宮崎美子さんが、現代の日本に生きる私たちにとっての「健康の大切さ」について語り合いました。
- 宮崎 美子さん(写真右)
- 1980年にデビューし、雑誌の写真企画をきっかけとしたテレビCMが話題に。現在は女優としてテレビドラマ・映画に幅広く出演している。また、クイズ番組等のバラエティ番組でも活躍中。
- 佐野 雅宏 副会長(写真左)
- 1979年、安田火災海上保険に入社。損害保険ジャパン日本興亜副社長執行役員、安田日本興亜健康保険組合理事長などを歴任し、2015年より現職。政府審議会の委員も務めている。
100年間、国民の安心を守り続ける健康保険
宮崎さん ▶
健康保険法が定められて、100年が経つそうですね。日本に住んでいると「健康保険制度はあるのが当たり前」という感覚がありますが、それほど長い歴史を持つものとは私も知りませんでした。健保連と健康保険法の関係について、改めて教えていただけますか?
佐野副会長 ▶
一定規模以上の社員(被保険者)のいる企業や業種による健康保険組合は、健康保険法のもとに設立されています。そして私たち健保連は、各組合を支えながら、健康保険制度の充実・強化に向けた活動を行ってきました。
宮崎 美子さん
宮崎さん ▶
なるほど。いまから100年前の1922年は、大正時代にあたります。日本の近代史において特に政情が不安定な時期から現代までずっと、健康保険制度が労働者の皆さんを支えてきたんですね。
佐野副会長 ▶
はい。日本には「国民皆保険制度」があり、国民全員を公的な医療保険制度で保障する体制が確立されています。そして実は、国民皆保険制度の始まりは、各企業が設立した社員とその家族向けの健康保険でした。そして、徐々に対象を全国民に広げていって、昭和36年に全国民が加入する仕組みが整ったんです。
宮崎さん ▶
それは知らなかった!昭和36年は私が生まれる前、と言いたいですけれど、生まれていますね(笑)。でも、幼いときからずっとお世話になっているんだな…と、改めて思いました。しかも、今は一つの会社や組織に一生いる人は少ないし、働き方も多様化している中で、どんな人でも健康保険に入っている。これってすごいですよね。
佐野副会長 ▶
国民全員の健康を守るための仕組みが作られて、徐々に発展し、縮小したりなくなったりすることなく現在まで存続しているのは、日本の社会全体が健康の重要性を認識しているからだと思います。1世紀もの間、受け継がれてきた想いの重みを強く感じますね。
宮崎さん ▶
幸い私自身は大きなけがや病気を経験していないのですが、高齢の家族が入院した際には「こんな金額でいいのかな」と思うほど、費用が安く済みました。医療費が一部負担で済むからこそ、必要なときにすぐ医療を受けられるんですよね。
佐野副会長 ▶
おっしゃる通りです。加えて日本の医療制度では、いつでも・どこでも受診できますが、諸外国では患者ごとに決められた医師の診療を受ける決まりがあったり、「緊急性が低い」と判断されれば、2~3週間以上も待たされる場合があるようです。
宮崎さん ▶
日本の平均寿命と保健医療水準が高く保たれているのは、健康保険制度のおかげでもあるんですね。
健康保険制度が存続の危機?何が起きているのか
佐野副会長 ▶
そんな日本の健康保険制度ですが、いま存続の危機に立たされています。医療費に関しては、どうしても高齢世代の方は受診する回数も多いし、金額も高くなってしまいますよね。そして、その費用は現役世代が支える仕組みになっていますが、高齢化が進んだ現在、日本では医療費の約6割を高齢者医療費が占めているんです。
宮崎さん ▶
少子化も進んでいるので、支え手である現役世代の人たちは減っていくわけですから、ますます大変ですよね。
佐野副会長 ▶
その通りです。実際に、我々現役世代が払っている保険料のうち、約4~5割は高齢者医療費に回っているんです。それでも賄えない分は、現役世代の保険料の引き上げという形で対応せざるを得ません。このままでは、若い人たちが重い負担に耐えられなくなり、国民皆保険制度が崩壊してしまう事態も考えられます。
宮崎さん ▶
「あって当たり前」と思っていた健康保険制度が、なくなるかもしれない…。想像したこともありませんでしたが、怖いですね。「もし自分や家族の体に何かあっても、すぐ治療を受けられる」と思っているからこそ、安心して生活できているわけですから、どうにか守っていきたいですよね。
佐野副会長 ▶
そのためには、年齢に関わらず、それぞれの能力に応じた負担をしていただくことが欠かせません。そこで今年の10月からは、後期高齢者医療における窓口負担割合が見直されました。
宮崎さん ▶
私も60歳を超えて、少し体の衰えを感じるときもあります。だから「その上に、医療費の負担まで増えるの?」と不安になってしまう、高齢者の皆さんの気持ちはよく分かるんです。でも、社会全体に対する想像力を持って、皆で支えあっていきたいですよね。
佐野副会長 ▶
おっしゃる通りですね。若い世代にどんどん負担が回っているということは、自分たちの子どもや孫の負担になっているのと同じです。これは問題を先送りしている状態ですから、全国民で支え合う仕組みに変えていく必要があります。
一人ひとりが健康を気遣い、日本社会を上向きに
佐野副会長 ▶
健康保険制度を維持するために、もう一つ大切なポイントがあります。それは、国民の皆さまが健康であることです。医療機関を利用する機会が減っていけば、医療費は抑えられますからね。
宮崎さん ▶
健康はなにより自分のために大切ですけれど、これからの時代は、社会のためにも重要なんですね。
佐野副会長 ▶
そうなんです。私自身も健康維持のために、一日1万歩を目標にウォーキングをするようにしています。もともと散歩が好きだから苦にならないし、仕事の帰りに少し遠回りしたりするだけで、意外と達成できるんです。
宮崎さん ▶
それはすばらしい。どれくらい続けていらっしゃるんですか?
佐野 雅宏 副会長
佐野副会長 ▶
もう10年ほどになります。平日に仕事が忙しくて目標を達成できなくても、一週間の歩数が7万歩以上になるように、休日の歩数を増やしているんですよ。宮崎さんは長い芸能生活の間、ずっといきいきと活動されているように思いますが、実践している健康法はありますか?
宮崎さん ▶
大したことはしていないんですよ。実はジム通いも続かなくて、コロナをきっかけに中断したままになっていますから。でも、毎朝ラジオ体操の第一と第二を通して取り組むようにしていますね。あとはスキマ時間にスクワットなどの簡単な筋トレをしたり…。
佐野副会長 ▶
厳しいトレーニングなどに取り組まれていると思っていたので、意外でした!
宮崎さん ▶
一生懸命やれば、ラジオ体操だけでもかなりいい運動になるんですよ。私は、「これからフルマラソンを走れるようになりたい!」とか、そういう大きすぎる目標は掲げていないんです。無理なく続けられることに長く取り組むのがいいのかな、と思っています。
佐野副会長 ▶
人によって向き・不向きがありますから、自分が好きな方法で体を動かすのがいいですよね。また、クイズ番組でずっとご活躍されていますが、もし「脳の若さ」の秘訣があれば、それもぜひお伺いしたいです。
宮崎さん ▶
あはは(笑)。私が脳を若く保つことができているとしたら、現場で若い人と交流して元気をもらっているからかもしれません。この間は、撮影現場で子役の子たちと虫取りをして遊んだんですよ。
佐野副会長 ▶
若い人と接するときは、どんな心持ちでいらっしゃいますか?子役の方だけでなく、年の離れた方と一緒にお仕事をされる機会が多いと思いますが、私だったら気後れしてしまうかもしれません。
宮崎さん ▶
そういう時はむしろ、新しい知識を取り入れるいい機会だと捉えています。「今の若い人たちにはどういう物事が流行っているのかな?」「そんな新しい言葉があるんだ、知らなかった!」と、たくさん刺激をもらっているんです。
佐野副会長 ▶
なるほど。衰えない好奇心が、宮崎さんがいつまでも若さを保っている秘訣なのかもしれないですね。
宮崎さん ▶
そうであればうれしいです。私だけでなく、年を重ねてもいきいきと暮らす人たちが大勢いれば、世の中全体を元気にできるはず。いくつになっても仕事や趣味を通じて社会に参加して、自分とは違う年代の方とコミュニケーションを取れるといいですよね。
佐野副会長 ▶
人生100年といわれるようになった近年は、年齢に関係なく、学び直しや新しい趣味・仕事を始める方もたくさんいらっしゃいます。
宮崎さん ▶
確かにそうですね。最近読んだ本にも、「自分は周囲の人から『100歳まで生きるだろう』と思われている。でも、自分は死ぬまで野山を駆け巡って自然を探究し、120歳まで生きるつもりだ」と書いてあって、「そういう姿勢で生きるのってかっこいいな」と思ったんです。
佐野副会長 ▶
生きがいを持つこと、自分の価値観の軸を見つけることは、これからの時代のキーワードになるでしょうね。そして、第二の人生を思いきり楽しむためには、健康が大切です。
宮崎さん ▶
私たちも、皆さまも、日本社会を支える一員として、いつまでも元気でいたいですね。
佐野副会長 ▶
おっしゃる通りです。本日はありがとうございました。