健康コラム

賢い患者になろう〜患者の悩み相談室〜 By COML vol.3

「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ「COML(コムル)」が、読者からの電話医療相談に丁寧に答えていきます。

【相談担当】
NPO法人ささえあい医療人権センター
COML(コムル) 山口 育子

診療ミスの補償問題

相 談(父親から)42歳の息子が半年ほど前、胃の痛みを訴えて近くの病院を受診しました。そのとき担当したドクターは何の検査もせず「胃潰瘍」と診断して薬を処方したそうです。

息子はその後、何度か通院したものの、薬を飲んでも一向に回復しないので、2〜3カ月後に職場近くのクリニックを受診したところ、すぐに胃カメラ検査となり、胃がんの疑いがあると言われて大きな病院を紹介されました。

紹介された病院では詳しい検査が行われ、胃がんとの診断で手術を受けました。その結果、術前の検査では分からなかった腹膜への転移があり、全部は取り切れなかったと言われました。そのため、現在は抗がん剤による治療を受けていて、効果が上がれば再度開腹して、取り除ける範囲のがんを摘出する方針だと聞いています。しかし、息子はどんどんやせ細ってきていて、再手術を受ける体力が残っているのだろうかと思うほどです。

最初の病院できちんと検査をしてくれていれば、もっと早くに治療が始められたはずと交渉しているのですが、院長は「落ち度がなかったとは言えず反省はしています。ただ、補償問題は医師会を通してください」と言うのです。何をどうすればいいのでしょうか。

コメント山口育子(COML)

確かに何の検査もせず胃潰瘍と診断するのは根拠がありませんし、結果、胃がんで腹膜に転移があったとなれば、「最初に分かっていれば早くに手術が受けられ、もしかしたら腹膜転移もなかったのではないか」と思うのは当然だと思います。しかし実際には、2〜3カ月の差がどれだけ病状に変化をもたらすかは判断の難しいところだと思います。

また、医師会には医事紛争処理委員会(名称は医師会によって異なる可能性があります)が設けられ、会員の医療機関でトラブルが生じたときに独自に判断・交渉せず、医師会に委ねるようになっているようです。そのため、当の医療機関では交渉から逃げているのではなく、医師会に加入している場合はその決まりに応じて対応しているといえます。それらの点を踏まえ、何を要求していくのか息子さん本人の意向も確認しながら交渉を進めていかれることが大切だと思います。

NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)

「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ

詳しくはCOMLホームページへ https://www.coml.gr.jp/

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