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ほっとひと息、こころにビタミン vol.47

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

親と子の思いやり

「第8回世帯動態調査(2019年実施)」をみると、65歳以上高齢者の親との同居割合は23.4%で、14年時の26.7%から低下し、親子が離れて暮らす傾向が高くなっていることが示唆されています。実の親といっても、成人してから一緒に住むのはなかなか難しいのでしょう。

このニュースを聞いて、しばらく前のテレビ番組で、高齢者が若いタレントの顔を覚えられないのは、外国人だからだと説明していたのを思い出しました。確かに私も、若いタレントの顔が区別できないことがよくあります。それは、加齢のために顔を忘れるからではなく、若い人たちの顔の構造が、外国人の顔と同じように、私のような高齢者と違ってきているためだと言われて妙に納得しました。

年代による違いは、顔の構造だけでなく、考え方にも現れます。若者の言動に高齢者が眉をひそめることは珍しくありません。逆もまたしかりです。こうした食い違いは家族以外の他人と起こるだけではありません。家族の間でも、また同じように起こります。むしろ、家族間での違いの方が問題になりやすいかもしれません。

「家族だから分かり合えて当然」という思いが強いために、お互いを理解しようという意識を持ちにくく、それがトラブルの原因になることが多いからです。「家族でも分かり合えない」ということを認識することが大切になります。同居しているかどうかに関わりなく、年代にも関わりなく、それぞれが独立した存在だと認識して相手を思いやる気持ちを持つことが、親子関係を良くするためには大切です。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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