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健保ニュース 2024年1月新年号

認知症薬レカネマブを薬価収載
ピーク時市場規模は986億円
費用対効果評価 価格調整範囲など特例対応

厚生労働省は12月20日、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行を抑制する「レケンビ点滴静注(成分名レカネマブ)」について、▽200㎎2mL1瓶4万5777円▽500㎎5mL1瓶11万4443円─で薬価基準に収載した。

1人当たり薬剤費は年間で約298万円、ピーク時の市場規模は986億円と予測される薬価を算定。12月13日に開催された中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の総会で承認された。

レカネマブの薬価は、比較薬が存在しないため、原材料費、製造経費、研究開発費等を積み上げる「原価計算方式」により算定。既存の治療方法で効果が不十分な患者群でも効果が認められたことや、初めて認知症の進行抑制が認められたこと等から、補正加算として「有用性加算Ⅰ(45%)」が適用された。

本薬剤は、▽患者本人および家族・介護者の安全性に関する内容も踏まえ本剤による治療意思が確認されている▽MRI検査が実施可能であることが確認された─などを満たしたうえで、アミロイドPETまたは脳脊髄液(CSF)検査を実施し、Aβ病理を示唆する所見が確認されている患者を対象に投与。

通常、「10㎎/㎏」を2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する。投与は原則18か月までとした。

1人当たり薬剤費は、年間で約298万円と推計されるが、高額療養費制度により、患者の自己負担は相当程度、抑えられる。ピーク時における年間の国内患者数は3.2万人で、市場規模は986億円と予測した。

補正加算が適用されているため、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の対象に該当し、市場実勢価格にもとづく薬価の引き下げが猶予され、現行の薬価は維持される。

市場規模が100億円以上となるため、費用対効果評価の品目区分「H1」に該当。本剤の費用対効果評価については、認知症に対する治療薬であり、▽介護費用の軽減に資する▽市場規模が大きくなる─可能性があることから、既存のルールを基本としつつ、特例的な評価を行うこととした。

有用性系加算等を価格調整範囲とする現行の方法ではなく、費用対効果評価の結果、「ICERが500万円/QALYとなる価格」について、▽見直し前の価格の差額を算出し、差額の25%を調整額▽見直し前の価格より高い場合は見直し前の価格に調整額を加えたものを調整後の価格▽見直し前の価格より低い場合は見直し前の価格から調整額を減じたものを調整後の価格─とする。

また、調整後の価格の上限、下限について、▽価格が引き上げとなる場合、価格調整後の価格上限は価格全体の110%(調整額が価格全体の10%以下)▽価格が引き下げとなる場合、調整後の価格下限は価格全体の85%(同15%以下)─とした。

他方、介護費用については、製造販売業者が介護費用を分析に含めることを希望した場合には、「中医協における費用対効果評価の分析ガイドライン」に則って分析を行う。

また、介護費用を分析に含めた場合と含めない場合について、製造販売業者が提出する分析を元に公的分析が検証、再分析を実施。専門組織で検討し、総合評価案を策定後、中医協総会で議論し、費用対効果評価の結果を決定するとした。

健保連の松本真人理事は、「レカネマブの市場規模は約1000億円ということで、1500億円という高額薬剤の基準値は下回る結果となった」と述べたうえで、「今後、検査体制が整備されていくことや、長期投与のエビデンスが蓄積されていくことにより、徐々に市場規模が拡大していく可能性は十分にある」と指摘。

このため、市場拡大再算定は、通常どおりの対応を基本としつつ、使用実態の変化が生じた場合、速やかに中医協総会に報告のうえ、対応の必要性について改めて検討を進めるべきと言及した。

他方、「レカネマブに関する国民の期待は極めて大きく、使用できない患者や家族への適切な対応が求められる」と強調し、「政府の認知症施策全体のなかで、レカネマブのような新たな治療法をどのように位置づけるかが今後の重要な課題となる」との見方を示した。

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