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健保ニュース 2023年9月下旬号

健保組合・令和4年度決算見込
一時的黒字も 赤字組合は全体の4割超
5年度は3600億円の赤字に

健保連は14日、記者会見を開き、健保組合の令和4年度決算見込を発表した。経常収支差引額は前年度の847億円の赤字から1365億円の黒字に転じたが、全体の4割超の559組合は依然赤字に陥る。黒字は新型コロナ感染拡大に伴う高齢者拠出金の大幅な減少が保険給付費の増加分を相殺した4年度限りの一時的な特殊要因。平均保険料率は前年度比0.03ポイント増の9.26%で過去最高を更新した。5年度は拠出金の急増に加え、保険給付費の高い伸びも影響し、3600億円の赤字を見通す。健保連の佐野雅宏副会長は、「現役世代の負担軽減へ、さらなる改革は不可避だ」と強く訴えた。

コロナ禍前の元年度比で増
月額1.3%、賞与3.4%

令和4年度の健保組合決算見込は、本会へ報告のあった1382組合の決算見込数値をもとに、5年3月末時点に存在する1383組合の財政状況を推計した。

組合数は前年度から5組合減の1383組合で、被保険者数は1658万9836人と前年度に比べ5万321人、0.3%増加した。また、被扶養者数は同31万7343人、2.7%減の1165万4483人。扶養率は同0.01人減の0.71人となっている。

被保険者数と被扶養者数を合わせた総加入者数は2824万4319人で同26万7022人、0.9%減となった。

保険料の基礎となる被保険者1人当たり平均標準報酬月額は38万2924円で同5379円(1.4%)増、平均標準賞与額は122万385円で同5万8700円(5.1%)増と、月額および賞与額とも増加。

新型コロナ感染拡大前の元年度決算と比較すると、月額1.3%増、賞与3.4%増となる。

平均料率は9.26%に上昇
1人当たり負担額も過去最高

平均保険料率(一般保険料率+調整保険料率)は9.26%で、前年度比0.03ポイント増加した。また、被保険者1人当たり保険料負担額は同2.4%増の51万1696円。いずれも過去最高を更新した。

収支均衡に必要な実質保険料率は、同0.23ポイント減の9.12%だった。

協会けんぽの平均保険料率10.0%以上の健保組合は315組合(前年度比8組合増)で、全組合の22.78%を占めている。

保険料率の負担状況をみると、事業主分5.027%、被保険者分4.230%だった。

4年度限りの特殊要因で
拠出金が6.7%の大幅減

令和4年度決算見込の経常収支状況をみると、経常収入総額は前年度比2231億円、2.7%増の8兆6058億円、経常支出総額は同19億円、0.0%増の8兆4693億円で、経常収支差引額は1365億円の黒字となり、収支は前年度の▲847億円から2212億円改善した。

収支改善は、▽保険料収入が対前年度比2239億円、2.7%増加▽拠出金が同2458億円、6.7%減少し、保険給付費の増加分(前年度比2431億円、5.7%)を相殺─したことが主な要因。

拠出金の大幅な減少は、新型コロナ感染拡大に伴う高齢者医療費の減少で4年度概算額が1.9%減少するとともに、2年度分の精算額が1445億円の返還となったことに伴う4年度限りの一時的な特殊要因となる。

収入面をみると、経常収入総額の98.6%を占める保険料収入は8兆4890億円で前年度比2239億円、2.7%増。

一方、支出面は経常支出8兆4693億円のうち、▽保険給付費4兆4903億円(構成比53.0%)▽後期高齢者支援金1兆9642億円(同23.2%)▽前期高齢者納付金1兆4413億円(同17.0%)▽保健事業費3715億円(同4.4%)─。

保険給付費は同2431億円、5.7%と大幅に増加し、新型コロナ感染拡大前の元年度と比較しても9.0%(1年当たり換算3.0%)伸びている。

拠出金は4年度の特殊要因で前年度比2458億円、6.7%減少。前期高齢者納付金の同1966億円、12.0%減に対し、後期高齢者支援金は同491億円、2.4%減の減少幅にとどまった。

データヘルス計画等、加入者の健康維持・増進のための保健事業費は、同17億円、0.5%増の3715億円。コロナ禍前の元年度と比べても2.3%の伸び率となった。

義務的経費に占める拠出金
負担50%以上は201組合

収支改善の結果、赤字組合は559組合で、前年度に比べ182組合減少したが、依然として全体の40.4%を占める。

赤字組合の赤字額は前年度に比べ1241億円減少し、総額▲1526億円。
 一方、黒字組合は178組合増加し、全体の59.6%となる824組合。黒字額は971億円増加し、総額2891億円となった。

義務的経費(法定給付費と拠出金の合計)に占める拠出金負担割合は43.6%で、高齢者拠出金の一時的な減少により、前年度に比べ3.1ポイント低下。拠出金負担割合が50%以上の組合は201組合で全体の14.5%を占めた。

5年度の健保組合財政
3600億円の赤字見通し

今後の健保組合財政について、令和4年度は高齢者拠出金の一時的な減少により収支は改善したが、直近の5年4~6月の医療費(3ヵ月平均で6.2%増)は4年度(年度平均で6.5%増)に引き続き、高い水準で推移していることから、今後の動向を慎重に見極める必要があるとした。

5年度は高齢者拠出金が4年度の一時的な拠出金減少の反動により前年度比2500億円、7.2%増と急激に増加。保険給付費の高い伸びも影響し、収支は▲3600億円と再度、赤字に転じ、6年度以降、毎年増加する拠出金により、さらなる財政悪化を見込んだ。

健保連の佐野雅宏副会長は、「現役世代の負担軽減、負担構造見直しの観点から、さらなる改革は不可避だ」と言及。

そのうえで、「後期高齢者にかかる自己負担割合の見直しや現役並み所得者の給付費に対する公費投入を進めていかないと、明るい見通しは持てない」との認識を示した。

健保組合の4年度介護保険決算
平均保険料率 過去最高の1.78%

健保連は14日の記者会見で、健保組合の「令和4年度介護保険決算見込状況」を公表した。

健保組合の介護納付金総額は前年度比82億円(0.81%)減の1兆21億円、被保険者1人当たり介護納付金額は同2128円(1.91%)減の10万9386円にそれぞれ減少。

平均介護保険料率(令和5年2月末)は同0.01ポイント増の1.78%、被保険者1人当たり保険料負担額(年額)は同2005円(1.7%)増の11万7791円で、いずれも過去最高を更新した。

平均介護保険料率に健康保険の一般保険料率と調整保険料率の平均9.26%を加えた合算保険料率の平均は11.03%となる。

4年度決算見込の収支状況をみると、収入総額は同252億円(2.31%)増の1兆1141億円、支出総額は同52億円(0.51%)減の1兆80億円。収入が支出を1061億円上回った。

介護保険収入は1兆791億円で、介護保険料率の引き上げなどにより、前年度に比べ301億円(2.87%)増加。1人当たり額は11万7791円で、同2005円(1.73%)増えた。

健保組合に加入する第2号被保険者数は1191万176人(前年度比1万9637人、0.17%増)で、このうち、健保組合の被保険者が908万1353人(同10万4059人、1.16%増)となっている。

平均標準報酬月額は43万1215円(同3993円、0.93%増)、平均標準賞与額は142万7162円(同6万6544円、4.89%増)だった。

令和4年度健保組合決算見込み

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