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イキイキごはん

からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。

薬膳にまなぶ食の知恵[「おいしい」からはじまるからだづくり]vol.23

白菜と大根で風邪知らず 白菜と豚肉の黒酢ダレかけ

中国の正月は旧暦にもとづきますので、日本よりひと月前後遅くなります。ちょうど今頃はにぎやかな時期です。日本のお正月の必需品といえばお餅ですが、私の故郷、北京など中国北部では水餃子が欠かせません。古代のお金がその形のルーツだといわれる縁起物なのです。鍋の中でぶつかり合いながら茹でられる様子が、ケンカしても1年間仲良く過ごしたいという思いと重なるからでもあります。

もう1つ、この季節の食事に欠かせないものがあります。それは生の白菜と大根です。冬の中国では多めに薬味を摂ってからだを温めますが、その一方、暖房で室温が高めなことが多いため、冬でもからだに熱がこもりがちです。薬膳では、白菜や大根のような白い食材は肺の乾燥を除いて潤いを与えるとされてきました。中国では珍しいことですが、加熱せずに生のまま食べることで、からだの表面の熱を逃すと考えられています。

今月ご紹介する料理にも、風邪予防に欠かせないビタミンCが豊富な白菜と、殺菌力のある大根を生のまま使いました。調味料に利用した黒酢にも殺菌作用があります。

美味しく作るコツは白菜の茎をできるだけ細く切ること。そうすることでタレが絡みやすくなります。寒さでからだが冷えているときには、生姜を多めに入れてください。

まだまだ寒い日が続きます。春の足音が聞こえるまで風邪を引かずに過ごしましょう。

白菜と豚肉の黒酢ダレかけ
  • 白菜の茎と葉をそれぞれ細切りにする。きくらげはお湯で柔らかくなるまで茹で、皮を剥いた大根と共に千切りにする。
  • 豚肉を1cm幅に切って、下味とよく混ぜる。
  • 白ごま油で豚肉を炒め、紹興酒と黒砂糖を加える。しっかり炒めたら、醤油を加えて混ぜ炒める。最後に火を止めてからごま油と胡椒をふる。
  • 皿に(1)の白菜と大根、きくらげ、(3)の豚肉、香菜の順に乗せ、クコの実を散らしてタレを添える。

中国薬膳では季節を5つに分け、食材を区分します。1日に5色を食べ、さらに季節の色の食材を多めに摂ることをお勧めします。

パン・ウェイ

パン・ウェイ

中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/

家庭薬膳のコツ

家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。

まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。

中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。

3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。

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