イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
風邪でもないのに空咳が出たり、気管のあたりがかゆいと感じられる方はいませんか。原因は夏の「余熱」の残りと、空気の乾燥だと考えられます。漢方では秋には肺が弱りやすく、その結果気分も塞ぎがちになると伝えられてきました。秋の憂うつは肺の調子と関係しているのかもしれません。
中国語には「秋遊(チョウヨウ)」という言葉があります。秋になると人々は野山のきれいな空気を吸って肺を労(いた)わると共に、気分転換を図ってきました。混雑を厭(いと)わずに紅葉狩りに出掛けたくなるのも、肺を活性化したいというからだの無言の要求なのではと思います。
この時期の食事で大切なことは2つ。1つは茄子などの果肉が白い食材で余熱を取ること。もう1つは黄色い食材で粘膜を強くすることです。カボチャやさつま芋、黄色いパプリカなどが挙げられます。今月ご紹介する料理にはそんな野菜をたくさん使いました。
とくにお勧めは芋類の中でも最も生命力を高める食材だと伝えられてきたさつま芋。秋には肺に次いで大腸も機能が低下すると漢方では考えられています。この時期、食物繊維の多いさつま芋は腸の解毒にもお勧めです。腸内がきれいになると吹き出物も出にくくなり、肌荒れの防止にもなります。
調理のコツは揚げた後にしっかり油を落とすこと。油っぽいと美味しくありませんので漬け汁に入れる前にしっかり油を切って下さい。

サラダ油で生姜を炒め、みじん切りにした干しエビを加え炒める。香りが出てきたらニンニク以外の漬け汁の材料を入れて弱火で1〜2分煮る。最後にニンニクを入れて火を止める。
野菜はそれぞれ長さ5cm、幅1cm弱に切り揃え、素揚げする。
(2)の油をしっかり切った後、(1)に2時間以上漬ける。
※冷蔵庫で一晩漬けるとより美味しくなる- (3)をお皿にのせて香菜を散らす。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。