イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
夏場の疲れがでてくる頃です。私の主宰する料理教室でも9月には怠(だる)さを口にされる生徒さんが増えます。さまざまな原因があるのでしょうが、その1つに冷たい飲食物の摂り過ぎがあると思われます。暑いとついつい冷たいジュースやアイスに手が伸びがち。でも胃を冷やすとその働きが低下し、消化吸収能力が落ちて、夏バテの状態になります。
皆さん驚かれるのですが、中国語には「夏バテ」という単語が存在しません。その理由は暑い時期でも冷たいもの食べる習慣が昔からないからだと思います。冷たいものを口にしても表面の暑さをひととき逃がすだけで、芯の暑さを除くには夏野菜などのからだを冷やす食材を摂るのが一番だと考えられているからです。もちろんアイスクリームなども口にしますが、冷えたと感じるとからだを温める生姜や唐辛子を摂るのが習慣になっています。
夏バテにお勧めなのはお酢を使った料理です。お酢に含まれるクエン酸が胃の働きを活発にしてくれます。今回ご紹介する料理には米酢を使いました。またからだを冷やす作用のある瓜(うり)系の野菜の茄子(なす)も使いました。冷たいものでからだを騙すのではなく、食材で余熱を除く方法を是非試してみて下さい。
今回の料理のコツはエビの背ワタを取った後、表面のぬめりをしっかり洗い流すこと。臭みが取れて美味しく味付けできます。

エビは殻を剥き、背ワタを取って流水でよく洗う。水気をしっかり取ってから下味用調味料を加えてよく混ぜる。
- ボウルに漬けダレの材料を入れてよく混ぜる。
ヘタを落とした茄子を縦に半分に切ったら、断面に格子状に切り目を入れて、高温できつね色になるまで素揚げする。(1)のエビの水分をしっかり取り、さっと素揚げする。油をしっかり切ったら、(2)に5分程度漬ける。
※油がはねるため、エビは1尾ずつ揚げるとよいお皿に(3)の茄子、エビの順に盛り、香菜、菊の花びら、クコの実を散らす。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。