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イキイキごはん

からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。

薬膳にまなぶ食の知恵[「おいしい」からはじまるからだづくり]vol.16

夏に欠かせない瓜(うり)系野菜 ズッキーニと豚肉のスープ

まもなく夏本番です。漢方では夏は心臓に負担がかかると考えられてきました。とくに高齢者が長時間笑い続けるのは危険だと考えられています。冗談のような話ですが、この時期に北京の漫談劇場に行くと、「あまり笑い過ぎないようにお気を付けくださいね」と係員が年配の方に声をかけるのをよく見かけます。その心臓には、苦瓜や緑茶などの「渋み」や「苦み」のある食材が良いといわれます。

汗をよくかく時期ですので水分補給も欠かせません。中国では単に水を飲むよりも、瓜系の野菜を食べます。2年前の上海万博会場で来場者がキュウリをかじる姿をテレビ等でご覧になったことはありませんか?複数の友人からなぜなのかと聞かれました。それは水分だけでなくミネラルも摂取でき、体調を整えられると昔から勧められてきたからです。また、野菜に含まれるビタミン類は夏の疲れを取り、免疫力も高めてくれます。

今月ご紹介する料理には瓜系のズッキーニを使いました。好みの柔らかさになるよう、下茹でする際には加熱時間を調整してください。ズッキーニの代わりに冬瓜(とうがん)やキュウリを使っても美味しくできます。

瓜系の野菜にはからだを冷やす作用もありますので、暑さでほてったからだにはぴったりです。上手に食べて夏場の体調を整えましょう。

ズッキーニと豚肉のスープ
  • 豚肉を一口大に切る。
  • お湯を張った鍋に、一口大の乱切りにしたズッキーニを入れ、柔らかくなるまで2分程度下茹でして、取り出す。
  • 鍋に白ごま油と叩き潰した生姜を入れ、中火で香りが出るまで炒める。豚肉を加えて少々炒めてから紹興酒と水、鶏スープの素、干しエビを入れて5分程度煮る。
  • (3)に(2)のズッキーニを加えてさらに少々煮た後、塩と胡椒で味を調える。器に入れて香菜とクコの実を散らす。

中国薬膳では季節を5つに分け、食材を区分します。1日に5色を食べ、さらに季節の色の食材を多めに摂ることをお勧めします。

パン・ウェイ

パン・ウェイ

中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/

家庭薬膳のコツ

家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。

まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。

中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。

3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。

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