イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
雨の多い季節です。中国では長江(揚子江)から南の地域にしか梅雨がありません。北京生まれの私の梅雨に関する思い出は、幼い頃に広州に住むおばあちゃんの家に遊びに行った時のこと。家中に満ちた湿っぽい匂いと、乾燥した北京と違って洗濯物がなかなか乾かなかったことをよく覚えています。
この時期は湿度が高いことから汗をかきにくくなります。そのため、ほかの時期と比べて発汗により解毒する機能が落ち、疲れがちになります。また、知らず知らずのうちに水分補給が減って血の濃度が高くなり、病気を引き起こしやすくなります。
こんな時にはお酢が昔から勧められてきました。疲労回復効果のあるアミノ酸が豊富だからです。中国産の黒酢はアミノ酸の量が多いので、ぜひ試してみてください。
また、血液をサラサラにする効果のあるピーマンと玉葱も梅雨時に摂っていただきたい食材です。今月ご紹介する料理はこの2つの野菜と、旬の桜エビを合わせました。調理のコツは桜エビを炒め過ぎないこと。火を通し過ぎるとエビの風味がなくなり、色も落ちて見た目も悪くなってしまいます。
一緒にご紹介したスープは簡単に中華料理屋さんの味が出せるはずです。水溶き片栗粉は様子を見ながらゆっくり入れるのがポイントです。

ワタを取ったピーマンと玉ねぎを千切りにする。
鍋に白ごま油と生姜を入れて炒め、香りが出たら(1)を加えて炒める。
(2)に合わせ調味料を入れて絡めたら、桜エビを加えさらに絡めて火を止める。
※干し桜エビを使うときは紹興酒を多めに使う

- 水と鶏スープの素、空豆を入れて3分程度煮込む。
- (1)に水溶き片栗粉を少しずつ加えてとろみが出てきたら、溶き卵を混ぜながらゆっくり入れ、最後にごま油を加える。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。