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イキイキごはん

からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。

薬膳にまなぶ食の知恵[「おいしい」からはじまるからだづくり]vol.13

大豆は春の宝物 豆腐の肉ソースがけ

中国では「春になりポカポカしてきても、しばらく厚着でいなさい」と言われます。冬の間休みがちだったからだが目を覚まさないうちにいきなり薄着に替えると、風邪や神経痛などの不調を招きやすいので気をつけましょうという意味です。

漢方では、この時期体内に熱がこもると考えられています。そのせいで目が赤くなったり、喉が渇きやすくなるほか、からだがほてったり、口内炎ができたりします。とくに肝臓に熱がこもるとイライラしがちで怒りっぽくなります。加えて胃と膵臓も弱り、栄養の吸収力が下がって、体力が落ちることがあると言われています。

この時期に毎日摂りたいのが大豆製品。豊富な植物たんぱくが肝機能を回復してくれます。また漢方では大豆は胃の機能を向上させる食材にも挙げられています。そこで今月ご紹介する料理には豆腐を使いました。

美味しく作るコツは挽肉ではなくブロックの豚肉を使うこと。一度冷凍させて、少し柔らかくなるまで解凍したところで包丁を入れると簡単に細かく切れます。挽肉を使ったものと比べると格段に味が違うはずです。

進学や就職、転勤などでこの春から新しい生活を送られている方も多いと思います。日頃の食生活を見直す良い機会にしてみませんか。

  • 豆腐は5分程度茹でた後、水を切り、手で軽く潰してお椀に入れる。
  • 8mm角に切った豚バラブロックと生姜を白ごま油で炒める。香りが出てきたら紹興酒と黒砂糖を加えて少々炒め、煮汁を加えてしばらく煮る(時々あくを取る)。
  • 煮汁が半分になったら水溶き片栗粉でとろみをつけ、仕上げにごま油と黒胡椒を散らす。
  • (1)の豆腐に(3)の肉ソースをかけ、小葱とクコの実を散らす。

中国薬膳では季節を5つに分け、食材を区分します。1日に5色を食べ、さらに季節の色の食材を多めに摂ることをお勧めします。

パン・ウェイ

パン・ウェイ

中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/

家庭薬膳のコツ

家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。

まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。

中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。

3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。

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