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イキイキごはん

からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。

薬膳にまなぶ食の知恵[「おいしい」からはじまるからだづくり]vol.11

冬の羊は優れもの 羊肉ときくらげ、セロリの炒めもの

1年で最も寒さが厳しいこの時期、私は羊肉が恋しくなります。

北京の名物として北京ダックを思い浮かべる方が多いと思われますが、じつは北京っ子にとっては羊のしゃぶしゃぶが一番の好物。冬の挨拶として「今日は寒いですね。早く家に帰って羊肉を食べましょう」と言葉を交わすくらい、北京では羊はポピュラーな食材です。

羊肉の赤身は発熱を促してからだを温め、脂肪を燃焼しやすくしてくれます。体温が上がると新陳代謝も活発になり、免疫力や消化吸収力が高まります。

またうれしいことに、羊肉はほかの肉よりも太りにくいといわれます。その脂身は人間の平熱より高い40℃以上でないと溶けず、体内で吸収されずに排出されるからです。運動量が減り、体脂肪が増えやすいこの時期にはうれしい食材ですね。

今月ご紹介する料理には血圧を下げる作用のあるセロリを一緒に使いました。寒い時期は血管が収縮し血圧も上がりがちになります。体温を上げるとともに、血圧を正常に保つ食材も摂りたいものです。北京では羊肉とセロリをよくペアで使います。

厚い冬着や暖房に頼るだけでなく、日々の食事からもからだを温めながら、厳しい寒さを乗り切りましょう。

  • 羊肉を約2cm幅に切り、下味用調味料を加えてよく混ぜる。
  • セロリの筋を取り、約3mm幅の斜め切りにする。水で戻したきくらげの硬い部分を取り、千切りにする。葱は縦に半分に切ってから約3mm幅の斜め切りにする。
  • 白ごま油で(1)の羊肉を炒め、合わせ調味料の半量を加えて少々炒める。生姜、にんにくの芽を加えて炒め、香りが出たら、セロリ、きくらげ、残りの半量の合わせ調味料を加えてさらに炒める。
  • (3)に黒砂糖、七味唐辛子、葱、ごま油、紹興酒溶き片栗粉、塩、胡椒を加えてさっと混ぜ炒める。お皿にのせ、クコの実を散らす。

香りが強く、風邪予防にもなる春菊を羊と合わせて召し上がるのもお勧めです。

パン・ウェイ

パン・ウェイ

中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/

家庭薬膳のコツ

家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。

まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。

中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。

3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。

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