HOME > 健康コラム > イキイキごはんバックナンバー > 薬膳にまなぶ食の知恵[「おいしい」からはじまるからだづくり]vol.9

イキイキごはん

からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。

薬膳にまなぶ食の知恵[「おいしい」からはじまるからだづくり]vol.9

新年への備え 生姜風味のエビワンタン

もう師走ですね。年の後半は、私の料理スタジオの引っ越しもあり、例年に増して忙しく過ぎました。1年を締めくくる前に何かやり残したことがある気がして、新年への備えはまだまだ手つかずです。

中国では年越しに際してそろえる品々を「年貨」といいます。お正月料理に使うさまざまな海産物のほかに、正月におろす衣服なども買いそろえます。それら「年貨」に事欠くと、その年は金運に恵まれないといわれてきました。

本格的な冬を迎える12月は、免疫力を向上させ、風邪などを寄せつけないからだを維持したい時期でもあります。この時期にお勧めの食材は甲殻類。中国では昔から、エビやカニの赤い成分は、体内に溜まった病気のもとになる毒素を排出すると伝えられてきました。そこで今回はエビを使ったワンタンをご紹介します。

美味しいワンタンを作るコツは、豚の背脂(無ければラード)を使うこと。エビ餡が硬くならず、プルンプルンになります。脂分は敬遠されがちですが、冬には適量の動物性脂肪をぜひ摂りたいもの。脂肪は寒さに抗って風邪をひきにくくしてくれるほか、乾燥による肌荒れからも守ってくれます。

忘年会やパーティーなども多い時期ですが、しっかり体調管理を行い、新しい年を元気に迎えましょう。

  • エビと豚の背脂は粗微塵切りにして叩く。ボウルにエビ餡の材料を全部入れてよく混ぜる。
  • ワンタンの皮に小さじ1/2〜1くらいのエビ餡をのせる。皮の周りに水を塗って三角形に折り、両端からひだを寄せてしっかり口を押さえて閉じる。
  • 鍋にたっぷりの湯を沸騰させたところに(2)を入れ、沸騰とさし水を3回繰り返す程度茹でた後、流水で軽く洗い、よく水気を切る。
  • 別の鍋に水と鶏スープの素を入れて沸騰させる。
  • お椀を2つ用意して、各小さじ1/2のごま油と醤油、(4)のスープ、(3)のワンタン、焼きのり、香菜の順に加える。
    ※スープの前に焼きのりと香菜を加えるとより香りが立つ。

動物性脂肪の摂取にはバターが手軽でお勧めです。質の良いものを適量摂りましょう。

パン・ウェイ

パン・ウェイ

中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/

家庭薬膳のコツ

家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。

まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。

中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。

3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。

バックナンバー