イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
秋も深まり、冬の足音が聞こえてきました。それにともない空気の乾燥が気になり始めます。私のおばあちゃんが子供の頃は、現代のように保湿クリームが出回っていませんでした。そこでナッツから作った油を、髪の毛を含めて全身に塗ったそうです。そうしないと乾燥の激しい冬の北京では皮膚が持たなかったようです。
寒い時期には血管に関連する病気が増えるようですが、ここでもナッツの出番。真冬に血管が破れたりしないよう、北京では晩秋から初冬にかけてナッツをよく摂ります。血管を柔らかくする効能があるほか、厳しい冬を過ごすのに必要な良質の蛋白質と脂肪分も豊富なため重宝されるのです。日本ではあまり見かけませんが、血をサラサラにする果実の山査子(さんざし)もあちらではよく食べられています。
今月ご紹介する料理には、昔から東洋で食べられてきたクルミを使いました。クルミはミネラルが豊富で、髪を黒くし、肌も艶やかにするといわれます。そして一緒に使った柿は、先月号でご紹介した黄色い食材の1つで、粘膜を強くしてくれます。
今回のレシピにはありませんが、旬の蕎麦の実と白米、もち米をそれぞれ同量混ぜて炊き、丼物にするのもお勧めです。蕎麦には血をサラサラにする効果があります。

手羽中の中央に一本切れ目を入れる。調味料で下味をつけた後、卵、片栗粉の順にまぶして、高温でカリッと揚げる。
皮をむいた柿とピーマン、玉葱を縦に一口大に切る。白ごま油でクルミと一緒に炒めたら鍋から取り出す。
合わせ調味料を鍋に入れ、混ぜながら沸騰させる。紹興酒で溶いた片栗粉でとろみをつけ、(1)の手羽中を加えて絡ませる。火を止めてから(2)を加えてよく混ぜる。
- (3)を皿に盛ったら黒ごまを散らし、白髪葱と香菜をのせる。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。