イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
私の故郷の北京では年間で最も過ごしやすいのが10月です。この時期によく使われる言葉に「秋高気爽(チウガオチーショワン)」というものがあります。字の通り中国北部では、秋の空は高く、空気もさわやか。でも残念ながら日本に比べて秋は短く、人々は限られた時間を惜しんで行楽に出かけます。
でも楽しんでばかりもいられません。厳しい冬に備えて、体調を整える必要もあるからです。この時期に必要なことは、夏からの暑さで弱りがちな粘膜を癒すことと、風邪をひかないよう免疫力を高めること。
粘膜にはかぼちゃやニンジン、みかん、とうもろこし、銀杏など黄色い食材が良いといわれています。そして免疫力強化に欠かせないのがキノコ。中国では昔からキノコを食べると風邪をひかないといわれてきました。食欲が旺盛になり体重が増えがちな秋には、低カロリーのキノコ類は嬉しい食材でもあります。
今月ご紹介するスープにもかぼちゃと椎茸を使っています。日本では事前に火を通した食材を汁物に入れることは稀ですが、中華料理では最初に炒めたり揚げたりした食材をスープに使うことが多々あります。油で素材の味をしっかり閉じ込めることができるからです。
秋の食材を上手に活用しながら冬に備えましょう。

かぼちゃと椎茸をそれぞれ1cm角に切り、かぼちゃをしっかり素揚げする。
- 鶏もも肉を1cm角に切って下味をつける。卵と片栗粉を入れてよく混ぜ、やや高温でしっかり揚げる。
白ごま油で長葱、椎茸、輪切りにした生姜を炒める。スープと紹興酒を加えてから、(1)のかぼちゃと(2)の鶏肉を入れて中火で15分間煮る。
(3)から長葱と生姜を取り出し、塩と胡椒で味を調える。
- お碗に(4)を注ぎ、ニラ、ハト麦、クコの実を散らす。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。