イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
今年の夏至は6月22日でした。中国には「夏至吃麺(シャージュチューメン)」という言葉があり、夏至の日に麺を食べる習慣があります。そしてそれ以降、麺を食べることが多い季節になります。この時期、日本でも「冷やし中華始めました」という貼り紙を見かけます。夏になると麺を食べる機会が増えるという方も多いのではないでしょうか。
でも、この冷やし中華、じつはラーメンと同様に日本生まれなのはご存じですか。冷たい料理を口にしない中国では、常温で食べる麺料理はありますが、冷やし中華やそうめんのように冷やしたものはありません。しかし、暑い夏に喉越しのよい麺類を好むのは中国も同じです。
速やかな体力の回復に必要なのがビタミンB類。さまざまな麺の原材料となる小麦は、このビタミンB類を豊富に含みます。その時々にからだが必要としている食材は、自然と美味しく感じるもの。普段からからだの声を聞くことは、健全な食生活を維持するうえでとても大切です。
今月ご紹介するのは湯麺ですが、夏バテ防止のために動物蛋白や野菜類も一緒に摂ることが大切です。暑さから胃腸が疲れがちですので、今回は脂肪分の少ない鶏肉を使いました。また、青梗菜(チンゲンサイ)は湯通しをし過ぎないのが美味しく食べるコツです。夏場の冷房でからだが冷えた際には、擦り生姜を上にのせるのもお勧めです。

青梗菜(チンゲンサイ)は、縦に半分に切る。
鍋に水とスープの素、生姜、葱、紹興酒、塩、鶏手羽中を入れて、柔らかくなるまで中火で20分程度煮る。煮ている間に鍋のスープを利用して、青梗菜(チンゲンサイ)ともやしをそれぞれ軽く湯通しする。
鶏手羽中を鍋から取り出して粗熱を取り、骨を除く。
- 別の鍋で冷麦を茹で、水気をきって器に盛る。青梗菜(チンゲンサイ)ともやし、鶏手羽肉をのせ、熱した(2)のスープをかけて、きゅうり、香菜、クコの実を飾る。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。