イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
今月から連載をさせて頂きます食養生研究家のパン・ウェイです。北京で生まれた私は薬膳知識に長けたおばあちゃんに育てられ、知らず知らずのうちに食の大切さを学んでいました。この1年、旬の食材で体調を整えるおばあちゃんの知恵をお伝えできればと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
中国では春夏秋冬に土用を加えて、季節を5つに分けます。各季節に五臓五腑や五官、食材等を区分して健康に気を配ります。その考えに基づくと春は肝臓が弱くなる時期です。寒さから体の活動が滞りがちな冬に溜まった毒素。温かくなり目覚めた体はそれを解毒しようとし、肝臓に負担がかかりがちになるというのが主な理由です。
弱った肝機能の回復に欠かせないのが蛋白質。ただし動物蛋白だけでは脂肪分を摂り過ぎてかえって肝臓が疲れます。おすすめは高蛋白低脂肪の豆腐などの大豆製品を中心にすることです。もちろん肉や魚、バターなど良質の動物蛋白と動物脂肪も適量は必要です。苦味やアクのある春野菜も解毒力を高めてくれます。
加えて中国では欠かせない食材がもう1つ。日本では二日酔いの際にシジミが効くといわれますが、あちらではホタテを食べて肝機能を改善します。海から離れた土地が多い中国では、干したホタテを一度水に戻してから、炒めものや蒸し物、スープに入れて使います。
最後に一言。お花見や歓迎会など酒宴が多い時期です。でも春は肝臓を労わって、お酒をほどほどにすることも忘れないで下さいね。

各野菜を食べやすいサイズに切り、それぞれ軽く茹でて、水分を取る。枸杞の実を水に戻す。厚揚げ豆腐も一口大に切る。
ホタテを水洗いし、水分を取る。フライパンに20gのバターを溶かし、ホタテと厚揚げ豆腐の両面を軽く焼いて取り出す。鍋に残ったバターをペーパーで拭く。さらに10gのバターを加えて溶けた後、ホタテと厚揚げ豆腐を戻して醤油を垂らす。
耐熱ボウルに青葱と生姜、韮、砂糖、塩を入れ、胡麻油をフライパンで煙が出るまで熱して注ぎ、手早く和える。春野菜を加えて和え、最後に塩で味を調整する。
お皿にホタテと厚揚げ豆腐を乗せ、(3)の春野菜を添えて、枸杞の実を飾る。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。