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企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

toBeマーケティング株式会社

ツールやデータを活用し社員巻き込み型施策を展開

企業のデジタルマーケティング戦略の策定などのコンサルティングや支援を中心に手掛けるtoBeマーケティング株式会社は、「従業員の健康がなければ企業も成長しない」との理念の下、継続的に健康経営に取り組み、6年連続で健康経営優良法人の認定を受けるとともに、2019年には健康優良企業「金の認定」を受けた。コロナ禍で新たに発生した健康課題に、データやツールを活用して、従業員全員を巻き込みながら施策を展開している。

同社の取り組みについて、toBeマーケティング株式会社イネーブルメント部部長の伊東知穂さん、同部イネーブルメントチームマネジャーの木村麻衣さん、同部人事/採用担当の佐藤小太郎さん、関東ITソフトウェア健康保険組合企画部長の徳永一馬さん、同企画課課長代理の河村良子(よしこ)さん、同企画課企画係の洪瑛志(ほんよんじ)さんにお話を聞いた。

【toBeマーケティング株式会社】
設立:2015年6月
本社:東京都中央区京橋1-6-13 5階
代表取締役CEO:小池智和
従業員数:113人
6年連続で健康経営優良法人に認定され、健康経営優良法人2023では「大規模法人部門」にノミネート

──従業員の健康が会社の成長を理念に施策を展開


toBeマーケティング株式会社
イネーブルメント部部長
伊東 知穂 さん

伊東さん ▶

 当社は2015年に設立し、その当初から大変忙しい状況が続いていました。

 代表取締役CEOの小池は、「従業員の健康がなければ企業も成長しない」と常々言っており、あるときに同業他社から「健康経営」という取り組みがあることを紹介いただいたのがきっかけで、取り組みを始めました。

 その時、すでに問題が発生していたわけではありませんが、従業員が増え、事業も大きくなる中で、「1人でも倒れてしまったら大変だ」という危機感があり、人事部門としても、何か策を打たなければならないと考えていました。

 そこで「従業員の健康がなければ企業も成長しない」を理念の根底に、他の企業を参考にしながら健康企業宣言を策定し、いきいきと働けるような職場づくりといったところから取り組みを始めました。私たちのコンサルティング業はピープルビジネスであり、おのおのの従業員がお客さまに知識を提供しているので、従業員が健康な状態を保ち成長していかなければ、会社全体の成長にもつながらないと思います。


toBeマーケティング株式会社
イネーブルメント部
イネーブルメントチームマネジャー
木村 麻衣 さん

木村さん ▶

 健康経営優良法人については、初めて「健康経営優良法人2018(中小企業部門)」の認定をいただき、その後も更新を続け、2021年、2022年に「ブライト500」に選出され、そして2023年には「大規模法人部門」での認定をいただき、6年連続で認定されました。

 健康企業宣言については、2017年に「銀の認定」を得た後、取り組みをレベルアップさせて、2019年に「金の認定」を取得し、以降毎年更新しています。

伊東さん ▶

 こうした表彰制度を健保組合からご案内いただき、「まずは認定を取れるようにやってみよう」という思いで始めましたが、実際に認定取得を進めていく中で、われわれは先進的なのではないかと気が付き、2021年に新設された「ブライト500」は継続していたら選ばれたという感覚でした。

 おかげさまで経済産業省の事例集に取り上げていただいたり、健保組合からも認定取得に関する加入事業所向けのセミナーでの講師依頼をいただいたりしました。

 社外でのこうした活動が次第に社内に認知されるようになり、「健康が大事だよね」という意識が社員にも芽吹き始めてきたと感じています。人事部門としても、最初は認定取得に主眼がありましたが、継続的に取り組んできたことで、認定取得が目的ではなく、「社員が健康でないと意味がないよね」という本来の意義に立ち返ることができたと感じています。


関東ITソフトウェア健康保険組合
企画部長 徳永 一馬 さん

徳永さん ▶

 私たち関東ITソフトウェア健康保険組合には約7300事業所が加入しています。健保組合としては、健康経営優良法人や健康経営に興味がある事業所への情報提供や取り組みの支援など、積極的に声掛けを行っています。

 近年、医療費が急速に伸び、また、高齢者医療への拠出金も増加しているため、このままの状況では、現在の財政運営では賄いきれなくなるのではないかという危機感があります。そうした中で、事業所単位のデータをみると、健康経営に取り組んでいる事業所のほうが、若干ですが1人当たり医療費が低い傾向があるので、そこに期待をしています。

──テレワークでもバーチャルオフィスで対話

伊東さん ▶

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、当社もテレワークに急速に対応し、現在でも中心的な働き方になっていますが、問題も生じています。

 問題の1つは、人間関係の構築です。当社では継続的に採用を行っており、毎月入社する社員がいますが、オンラインのみで会社に慣れていただき、人間関係をつくっていくのは難しいところがあります。この問題を解消するため、テレワークでも出社している状態をオンライン空間で表現できるバーチャルオフィスを導入しました。

木村さん ▶

 出社するとバーチャルオフィスに個々人のアバターが現れます。自身のアバターを動かして、話しかけたい人のところに近づくとオンラインで話しかけることができたり、資料の画面共有ができ、オンラインカメラで顔を合わせたりと、リアルオフィスに近い状況でコミュニケーションがとれます。

伊東さん ▶

 テレワークでは孤独感が強くなるので、その解消にもつながると考えています。各部門のミーティングでもバーチャルオフィスを使用しています。

 また、コミュニケーションの促進のため、健康を組み合わせた「健康リレー」という取り組みを実施しています。


toBeマーケティング株式会社
イネーブルメント部人事/採用担当
 佐藤 小太郎 さん

佐藤さん ▶

 人事部門ではさまざまな施策を打ってきましたが、コロナ禍かつテレワークの中では、「人事がやっている」という他人事のような雰囲気があったと感じました。他社の方がたと情報交換する機会があり、そこでヒントを頂いて、社員巻き込み型の施策として始まったのが「健康リレー」です。

 社内のチャットツールを用いて、社員がリレー形式で健康に関する投稿を週1回の頻度で投稿していきます。例えば、「筋トレしています」や「マインドフルネス始めました!」、「オートミールのおいしい食べ方」といった投稿がありました。次のバトンを渡すのも投稿者の役割で「次は○○さんにお願いします」という形にしています。

 「いいね」機能でスタンプをしたり、社員同士で情報交換があったり、インタラクティブな場が生まれ、取り組みを通じて「健康」に対する向き合い方が自分事に向かってきたと感じています。

木村さん ▶

 今年初めから開始して、現在も続いています。「再検査の重要性」を、身を持って訴えてくれた投稿もあり、人事部門がいくら勧奨しても受診してくれない社員の心に刺さっているようです。

──「健康サブスク制度」で社員の健康づくりを支援

木村さん ▶

 コロナ前はオフィスに野菜ジュースを置くなどしていたのですが、テレワークになってからは、そうした物理的な支援ができなくなってしまいました。「健康経営」を掲げていても、自宅にいては何も支援できないことを、小池も気にしていました。

 そこで、何かしらの経済的な支援があれば社員の健康増進を後押しできるのではないかと考え、「健康サブスク制度」を導入しました。睡眠アプリの使用やサプリメントの購入、スポーツクラブの利用料などに対して、会社が費用の一部を支援しています。対象となるサービスと金額をリストアップしていますが、社員の要望を聞きながら対象を増やしています。

伊東さん ▶

 金額は月1500円を上限としています。決して大きな金額ではないですが、会社として支援しているということが大事だと考えています。2021年7月から開始し、利用者は徐々に増えています。

 また、社内で行っている健康に関する研修の方法を今年から変更し、社員が講師となり実体験を話す研修と、全社員が参加する会議で短い時間で頻度高く研修を実施する方法を取り入れました。

 全社員が参加する会議が2〜3週間に1回にあります。用意された研修は、リテラシーが高い社員は自主的に参加してくれますが、本当に聞いて欲しい社員が参加してくれないというジレンマが長くありました。しかし、全社員が参加する会議で短い時間でも頻度高く実施することで、自然と情報を伝えられるようになりました。

木村さん ▶

 当社では全社員に3カ月に1回、健康アンケートを行っており、それをもとに研修のテーマを決めています。不調の原因では、腰痛や肩凝り、睡眠・運動不足が多いほか、最近は眼精疲労が挙がっており、テレワークから生じているのではないかと考えています。

伊東さん ▶

 仕事柄、ツールの使用やデータを取ることに社員のハードルが低く、そうしたものを生かす方法が向いているのだと思います。

 健保組合から提供された当社のスコアリングレポートは通常、社員に公開していないのですが、コロナ禍のレポートでは、肝機能の悪化や、飲酒・喫煙の増加があまりにもひどかったので、この時は社員に公開し、「これはどうことだと思いますか?」と投げかけました。

──社員1人ひとりが健康を考え取り組む状況に


関東ITソフトウェア健康保険組合
企画課課長代理 河村 良子 さん

河村さん ▶

 健康企業宣言に取り組んでいる加入事業所は500社を超え、その数は年々増加しています。コロナ禍では新規に取り組みを始める事業所数が落ち込んでいましたが、今年に入ってからは事業所から多くの相談が来ています。

洪さん ▶

 例年は夏頃までに10社あれば多いほうですが、今年は40社近い事業所から相談がありました。

河村さん ▶

 当健保組合には健康企業宣言に取り組まれている事業所に参加をいただいて活動している会議体があり、現在、55社の皆さんに参加していただいています。毎月、取り組みに役立つ健康情報誌の配布、スコアリングレポートや健康経営度調査等の資料の提供、健康に関するセミナーを事業所の担当者向けに実施しています。

 また、全加入事業所を対象に、事業所で実施できるさまざまな研修メニューを用意し、その費用の半額を補助する取り組みがありますが、申し込みがなかなか伸びていないのが悩みです。


関東ITソフトウェア健康保険組合
企画課企画係 洪 瑛志 さん

洪さん ▶

 担当して2年目になりますが、健康経営に興味があり、そうした取り組みに関わりたいと考えていました。実際に事業所を支援する側になってみて、事業所にも温度差があり、先駆的な事業所の取り組みは大変勉強になります。

徳永さん ▶

 われわれとしてはさまざまな情報提供や支援といったメニューを用意していますが、今後の課題は、こうした事業をいかに事業所の担当者の皆さんにアピールしていくか、そしてその先の被保険者に広げていくのかが課題だと考えています。

伊東さん ▶

 健康経営に取り組む中で、何をしたらよいか分からない時に健保組合にホットラインがあり、なんでも相談できる環境は大変助かっています。

 当社では、ようやく人事部門だけではなく、社員1人ひとりが自身の健康のことを考えるフェーズに入ってきたと思います。

 今後は、社員だけで健康増進のサイクルが動いていく、自身の健康を自分たちで良くするのだということが発信されるような状況にしていきたいと思います。

健康コラム
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