HOME > 健康コラム > 企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~ > サンスターグループ

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

サンスターグループ

歯科検診と健康道場を軸とする健康づくりで医療費抑制

 1932年に創業し、オーラルケアなどの健康関連事業などを展開しているサンスターグループ。
 サンスターグループは、社是に「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」を掲げ、健康産業に携わる以上、社員自らが健康であるべきという考えから、社員の行動規範には「心と体の健康を増進する」と明記しています。サンスターグループの健康づくりの象徴といえるのが、85年に開設された健康増進施設「サンスター心身健康道場」です。この健康道場を拠点とした健康づくりで、医療費の支出額が全国平均を下回るといった効果が出ています。そんなサンスターグループの取り組みについて、話を伺いました。

【サンスター健康保険組合概要】
加入事業所数:7社(2018年11月30日現在)
加入者数:3153名 ※被扶養者1505名含む

──社員の健康づくりに取り組むきっかけや背景などについてお聞かせください。


サンスターグループ
コーポレートマネジメント理事・日本ブロック
人事・総務部部長 宮嵜 潤 さん

 サンスター創業者の金田邦夫が生活習慣病によって早世し、2代目の金田博夫(現グループ会長)も生活習慣病を患うなど、経営者自身が健康の重要性を認識していました。そこで、1957年にサンスター健康保険組合を設立し、63年には社是に「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」を掲げました。また、社員の行動規範にも「心と体の健康を増進する」ことを盛り込みました。「まずは社員自身が健康であるべき」という考え方が事業の根底にあることから、昭和30年代から経営戦略の1つとして社員の健康づくりが重要視されてきました。

 さらに、2代目の金田博夫は「西式健康法」と呼ばれる、人間が本来持っている自然治癒力を高める健康法で生活習慣病を克服したことから、85年にこの健康法が体験できる社員向けの健康増進施設「サンスター心身健康道場」を開設しました。健康道場では、「食事」「身体」「心」の3つの視点に基づき、健康バランスを取り戻す宿泊型の健康指導プログラムを提供しています。社員は、入社時の新入社員研修と35歳の節目研修、管理職研修の際に健康道場のプログラムを体験します。さらに、健診の結果で特定保健指導の積極的支援の対象に該当した人には、この施設を活用した保健指導を実施しています。

 私どもでは、この健康道場を拠点とした社員の健康維持・増進を展開し、社内の健康風土を醸成しています。また、健保組合を設立した当初から、会社と健保組合、そして健康道場を運営するサンスター財団など、グループが一体となって社員の健康づくりに取り組んできました。組織の体制も、健保組合の常務理事や財団の専務理事などを互いに兼務するなど、一体感をもってコラボヘルスに取り組めるような仕組みになっています。

──具体的にはどのような取り組みを実施していますか。

 サンスターグループでは、社員全員に人間ドックに近い健診と歯科検診を実施しています。歯科検診は、法定健診にあわせて実施するため、実施率が健診と変わらず、ほぼ100%です。

 会社の事業でもありますが、生活習慣病予防においては、歯周病を予防するためのオーラルケアが重要だと認識していることから、30年以上オーラルケアに力を入れてきました。そのため、要因は特定しにくいのですが、各年代別に医療費を見たとき、すべての年代において全国平均を下回っています。医療費を抑制できていることから、健診や健康づくりなどに使う保健事業費に抑制分を充てています。


一般財団法人 サンスター財団
健康推進室長 谷水 良亘 さん

 健診の結果、経過観察が必要になった社員には、医師・保健師による面談と健診6カ月後の血液検査などを実施し、重症化予防に努めています。また、特定保健指導の積極的支援対象者には、前述の健康道場を活用して、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)研修を行っています。QOL研修では、健康知識の習得、生活習慣の振り返り学習、オーラルケア指導、低カロリーの玄米菜食の食事、ウオーキング、アクアビクス、ストレッチなどの運動、冷温交代浴などを組み合わせた2泊3日の宿泊型健康指導プログラムを提供しています。プログラムは多少過酷な面もありますが、脊椎の歪みや宿便、血液の循環などを改善し、人間が本来持っている自然治癒力や免疫力を高めてもらうこと目指しています。

 健康道場での研修は、以前は新入社員研修と管理職研修のみでしたが、時代の変化とともに中途入社の社員が増加したことや、健康づくりは40歳になる手前の35歳くらいから実施するのが効果的だと分かってきたことから、35歳の節目研修を実施するようにしました。研修は、業務の一環として実施しています。2回、3回と健康道場のプログラムを体験することで、社員の健康への理解が浸透、継続することを期待しています。

 昨年の春からは、35歳以上の社員に5年ごとの腹部エコー検診を新たに始めるなど、さらなる充実化を図っています。また、女性特有の健康課題として挙げられる乳がん検診については、市区町村の補助チケットでは予約が取りにくいといった声もあり、事業所に健診車を配置する方法で受診しやすくしました。

──健康経営優良法人2017、2018(ホワイト500)への認定についてお聞かせください。

 私どもでは、健康経営銘柄や健康経営優良法人といった世の中の動きが出てくるかなり前から、経営戦略の1つとして社員の健康づくりに取り組んできました。ホワイト500への認定に向けて新たに何かを始めたわけではありませんが、調査票への回答を通じて、実施内容を確認しています。健康経営に取り組む企業が増えたことによって、年々求められるレベルが高くなっているように感じます。そこで、これまでコツコツと積み上げてきた事業を継続しつつ、見えてくる課題に応じて見直しや改善を重ねていきたいと思います。

──現状抱えている課題などについてお聞かせください。


サンスター健康保険組合
常務理事 小泉 裕美 さん

 健康道場で学んだことを日常生活でも実践できるかが課題です。たとえば、朝食を抜いている人は、道場で取り入れている野菜やフルーツのスムージー(青汁)を飲むなど、普段から意識してほしいと思っています。日常生活での実践の第一歩として、玄米弁当を事業所に配達するサービスを始めました。しかし、こうした取り組みは、健康感度の高い人には効果的ですが、無関心な人たちにはあまり浸透しません。また、積極的支援対象者に向けて健康道場プログラムを実施していますが、なかなか参加してくれない対象者もいます。そうした人たちへ参加を促すことが課題です。

 サンスターグループは、医療費全体としては全国平均を下回っていますが、個別の疾患で見たとき、メンタルヘルス疾患などについては、他社と比較しても、平均的なところにとどまっています。社是にも掲げているとおり、社員は健康でなければならないので、平均より引き下げたいと思っています。そこで今年度は、ここ数年休止していた座禅を健康道場のプログラムに復活させ、マインドフルネスの要素を加え、メンタルヘルスを強化しているところです。

サンスターグループ コーポレートマネジメント理事・日本ブロック 人事・総務部部長 宮嵜 潤 さん
「サンスターグループでは、健保組合設立時から会社も一体となって社員の健康づくりを行うコラボヘルスを実施してきました」

一般財団法人 サンスター財団 健康推進室長 谷水 良亘 さん
「健康道場のプログラムは多少過酷なメニューもありますが、体重や血糖値が改善するなど数値として効果が出ており、社員の健康リテラシーの向上にもつながっています」

サンスター健康保険組合 常務理事 小泉 裕美 さん
「30年以上にわたる歯科検診や健康道場による健康づくりで、当健保組合の医療費は平均以下に抑えられ、その分を保健事業に充てています」

健康コラム
KENKO-column