企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

中部電力株式会社

「安全と健康」の健康経営に取り組みライフ・ワーク・バランスを推進

働きやすい職場環境を目指して「ライフ・ワーク・バランス」を推進している中部電力株式会社。その一環として、「安全と健康」に重点を置いた健康経営の強化を進めており、2017年には「健康経営宣言」を行い、18年から「健康経営優良法人」に認定されている。さらに、今年は、電力会社として初めて「健康経営銘柄2019」に選定された。

同社の健康経営の取り組みについて、中部電力人事室部長兼人事センター労務グループ長・横山幹也さん、同人事センター労務グループ副長・米倉健史さん、同主任・大橋明美さん、同・田中健太さん、同健康管理室保健師・末永美智子さん、中部電力健康保険組合常務理事・堀昌宏さん、同事務長・鈴木耕一さんに話を聞いた。

【中部電力株式会社】
設 立:1951年5月1日
本 社:愛知県名古屋市東区東新町1番地
代表取締役社長:勝野 哲
従業員数: 16,461人(2018年3月31日現在)

──健康経営の取り組み


中部電力人事室部長
兼人事センター労務グループ長
横山 幹也 さん

横山さん ▶

 「従業員あっての会社」との思いがあります。当社では「人財」と呼んでいるのですが、「従業員が生き生きと働くためには、ライフ(心身の健康・充実した生活)が基盤となる」との考えのもと、「ライフ・ワーク・バランス」を推進しています。

田中さん ▶

 当社は従来から産業保健スタッフの手厚い体制のもと、従業員をサポートしています。健康づくりや保健指導だけでなく疾病管理においても、適切にフォローして迅速に職場復帰できるような非常に整った環境があります。

 電力業界の送配電部門は来年4月、法的分離で分社化されます。そのため、従業員の繁忙度が高まっていますが、さらに健康経営の取り組みを推進していくことで、これからも安全で健康に職務に専念できる環境を維持・発展させていきたいと考えています。


中部電力健康保険組合
常務理事
堀 昌宏 さん

堀さん ▶

 当組合は中部電力を母体企業として、全29事業所で構成されています。その中で、中部電力が先頭に立って健康経営を進めていることは、本当にありがたいと思っています。

 2015年度から始まったデータヘルス計画と健康経営を車の両輪としてうまく回せれば、加入者の健康維持・増進が図れると考えました。現在、18事業所で健康宣言をしていますが、残念ながら道半ばの状況です。全事業所が健康宣言をして健康経営に取り組んでもらうことが第一ですが、その次は、健康宣言書の任意項目である「社員の家族の健康にも積極的に取り組みます」も選択してほしいと思っています。従業員が安心して働けるのは家族の健康があってこそですからね。


中部電力健康保険組合
事務長
鈴木 耕一 さん

鈴木さん ▶

 従業員を大切にする会社が健康経営に熱心に取り組んでいるものと認識しています。まずは、全事業所で健康宣言をして、中部電力グループが従業員に優しい企業の集まりになるようにしていきたいです。

──「健康経営銘柄2019」に選定

横山さん ▶

 従来から、メンタルヘルス対策や産業保健スタッフによるきめ細かな保健指導・健康相談に取り組んできた経緯もあり、18年に健康経営優良法人(ホワイト500)に認定されました。

 ホワイト500に認定されたときの健康経営度調査の評価も高かったので、これまでの当社の取り組みは間違っていないと思いました。同時に健康経営の取り組みをさらに強化していきたい、要は大きなPDCAを回したいとの思いが強く、認定後は健康経営度調査の回答に対する、フィードバックをもとに改善すべき点を整理しました。

 その上で、新たに、重大疾病の早期予防・発見、健康意識の醸成を目的とした全従業員対象の人間ドック受診(費用負担なし)などを実施した結果、今年は電力会社として初めて健康経営銘柄に選定されました。

 健康経営銘柄やホワイト500の取得自体が目的ではありませんが、従業員が健康であれば、会社の収益も良くなるという相乗効果もあります。そうした意味でも、今後もさまざまな取り組みを行っていきたいと考えています。

 当社は、女性活躍などダイバーシティーにも力を入れています。こうした点においても社会や就職活動中の学生から一定の評価もあり、健康という概念の顕彰制度にチャレンジしてみて、健康経営銘柄に選定されれば一層の企業価値の向上にもつながるというイメージを持っていました。また、健康経営銘柄の選定は従業員のためにもなりますし、さらに対外的なPR効果があると思います。


中部電力人事センター
労務グループ
田中 健太 さん

田中さん ▶

 「安全と健康」といった会社の思いや取り組みが世の中に認められ、銘柄に選定されたことは非常に嬉しく思っております。また、衛生担当としては、産業保健スタッフがいろいろと工夫をして、従業員1人ひとりとしっかりと向き合って対応してきた取り組みが認められたところに、本当に感謝の気持ちを持ちました。

末永さん ▶

 私たちが長年取り組んできたことが評価されたわけであり、保健師としては大変うれしく思いました。評価していただいたのは保健師の取り組みだけではなく、健康経営の取り組みの中心となって施策を考えている衛生担当スタッフがいたからこそ、選定されたと思っています。

大橋さん ▶

 今年3月末まで育児休業中であったため、選定を初めて知ったのは、仲の良い保健師からの連絡でした。その保健師も、「自分たちが取り組んできたことが認められた」と大変喜んでいたのが印象的でした。しかし同時に、選定がゴールではなく、ここからまたスタートしていかなければならないと思いました。今後も衛生担当スタッフとして、産業保健スタッフと知恵を出し合いながら、1つひとつ、自分たちがやるべきことに取り組んでいきたいと思っています。


中部電力人事センター
労務グループ副長
米倉 健史 さん

米倉さん ▶

 今年7月に、グループ会社から8年ぶりに当社へ出向解除となりました。そのため、衛生担当に着任してから、銘柄がどのような基準で選定されているのか知らず、業界の中から1社しか選ばれないと聞き、大変驚いたというのが率直な感想です。

 私も健康経営銘柄に選定されるのが目的ではないと思います。その本質を間違わないように、1つひとつ手を止めることなく施策を打っていくことが大事だと考えます。その結果、今後の銘柄選定につながれば、本当に素晴らしいことだと思います。

堀さん ▶

 中部電力の出身でもありますので、銘柄に選定され、大変うれしく思いました。健保組合としては、中部電力の選定が契機となり、他の事業所に健康経営を広めていく良い材料になると思っています。

鈴木さん ▶

 全従業員対象の人間ドック受診が評価されたという話を聞きました。健保組合職員も、人間ドック受診に対応するため、健診機関の契約をそれまでの123機関から148機関に増やすなどの苦労を目の当たりにしていたので、銘柄に選定されたことを職員と一緒になって喜びました。これを糧にして、全事業所の健康宣言を目指し、従業員に優しい会社となっていただけるようにフォローしていきたい、と強い思いを抱きました。

──今後の取り組みについて

横山さん ▶

 じつは、選定が決まったときに、光栄であるという気持ちとともに、プレッシャーも感じました。選定によって、世の中に対してアピールできると同時に、選定企業として健康経営の普及拡大に向けたアンバサダーの役割があると考えています。健康経営銘柄の取得が目的ではなく、取り組んだ施策のフォローやPDCAを回すとともに、健康経営の普及拡大など健康経営に継続して取り組まなければなりません。

田中さん ▶

 PDCAを回しながら課題を整理し、取り組んでいくことが重要で、健康づくりや衛生は、終わりのない仕事ではないかと考えています。健康経営度調査の活用で、当社の取り組みの弱い部分を確認しながら新たな対応を行っていくなど、頑張っていきたいです。


中部電力人事センター
労務グループ
健康管理室保健師
末永 美智子 さん

末永さん ▶

 これから、従業員のためにどのような施策を行っていく必要があるか、保健師としてもプレッシャーはあるのですが、従業員に寄り添うという部分は、最前線にいる保健師としては、これからも大切にしていかなければならないと思っています。衛生担当スタッフと一緒になって、より従業員のためになる施策を考えて取り組んでいきたいです。

──コラボヘルスの推進

横山さん ▶

 今後の健康経営の推進に向けては、グループ一体の取り組みがますます重要になってくると考えています。当社はグループ健保組合であるため、健保組合とタッグを組んで、企業側は当社がリーダーシップを取りつつ、グループ全体で健康づくりに取り組むため、知恵を出さなければならないという思いを持っています。

田中さん ▶

 人間ドックや健康づくりイベントなど、健保組合からも健康経営の後押しを受けています。従業員の一層の健康を考えると、これまで以上に健保組合と連携しながら対応していくことが重要だと考えています。

末永さん ▶

 従業員の健康づくりについては、当社と健保組合が両輪で取り組んでいると認識しています。これからも医療的な立場から情報交換しながら、一緒になって取り組みたいと思っています。


中部電力人事センター
労務グループ主任
大橋 明美 さん

大橋さん ▶

 健康に関する取り組みを進めていくためには、今後は仕事中だけでなく、プライベートな時間まで踏み込むことも必要だと考えています。その中で、家族に対する支援が必ず必要になると思っており、家族である被扶養者とのつながりを持っている健保組合の力はどうしても必要です。従業員と家族の健康を維持していくため、これからも一緒になって取り組みを進めたいです。

米倉さん ▶

 グループ会社に出向していた経験から感じることは、健康づくりに対する会社側のサポートは、当社に比べグループ会社の方が行き届いていない部分があると感じています。会社として何ができるのか、健保組合と情報交換をしながらグループ会社にも健康経営施策を広げていき、グループ全体で活躍していける企業を目指していけたらと思っています。

堀さん ▶

 繰り返しになりますが、データヘルス計画と健康経営は車の両輪と考えており、それがうまく回れば、コラボヘルスがうまくいっている状況だと思います。要は、経営トップが健康宣言をして、会社全体として健康経営に取り組む、そして、健保組合はレセプトデータや健診結果に基づき、各事業所の健康課題を知らせるなど、いろいろなサポートや取り組みができると思っています。

鈴木さん ▶

 健康経営を進める中で、いろいろな課題も出てくると思います。そうした課題に、健保組合としてできることを一生懸命にフォローしていきたいと思います。29事業所にはそれぞれ違った課題がありますので、寄り添った形でフォローしていきたいです。

健康コラム
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