HOME > 健康コラム > 企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~ > 株式会社丸井グループ

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

株式会社丸井グループ

全社員が今よりもいい方向へ。「しあわせ」を生む健康経営

 1931年に家具の月賦商として創業し、小売と金融が一体となった独自のビジネスモデルを時代や顧客のニーズに合わせて進化させてきた株式会社丸井グループ。「人の成長=企業の成長」を経営理念の1つに掲げ、丸井グループの経営直下の独立部門である健康推進部と丸井健保組合が連携して、社員が活躍できる職場環境の整備を目指して健康づくりに取り組んでいます。2016年には健康経営最高責任者としてCHO(Chief Health Officer)を設置。17年、18年と2年連続で健康経営優良法人に認定され、さらに18年には小売部門において健康経営銘柄に選定されました。その具体的な取り組みについて、話を伺いました。

「共創経営レポート 2018」冊子の画像
共創経営レポート 2018

【株式会社丸井グループ概要】
創 業:1931年2月17日
設 立:1937年3月30日
代表者:代表取締役社長 青井 浩
所在地:東京都中野区中野4-3-2
従業員数:5548名

【丸井健康保険組合概要】
加入事業所数:18事業所(2018年9月末現在)
加入者数:1万1536名 ※被扶養者4364名を含む

──社員の健康づくりに取り組まれたきっかけや背景などについてお聞かせください。


株式会社丸井グループ
取締役専務執行役員CSO・CHO
石井 友夫 さん

丸井グループ ▼

 丸井グループは、創業者の時代から、社員は家族という認識があり、社員の健康はもともと重要視されてきました。1962年に丸井健康保険組合を設立、70 年に丸井健保会館を開設し、そのなかに自前の健診施設を設け、社員の健診や人間ドックを実施しています。

 私どもでは「人の成長=企業の成長」を経営理念の1つに掲げており、人の成長の基盤として「健康」が重要と位置づけています。そこで、疾病予防や重症化予防の観点から、個々人への健康管理などは健保組合が担い、会社は働き方改革を含め、社員の活力を高め「しあわせ」になることを目的とした健康づくりを実施しています。丸井グループの健康経営は、会社や組織がイキイキとした環境であれば、一人ひとりも前向きに物事に取り組めて、結果的に心身ともに健康になり、会社の生産性も高まっているというように、不健康な人が健康になるだけでなく、健康な人も今よりもいい状態になることを理想としています。

丸井グループの「健康経営」が目指すこと・・・「病気の人」「リスクが高い人」だけでなく、全員が今よりイキイキすること

──具体的にはどのような取り組みを実施していますか。

丸井グループ ▼

 丸井グループでは、持続可能性のある経営を目指して、企業の体質をトップダウンからボトムアップへと大きく方向転換しました。長年の企業体質は、すぐには切り替えられないため、社員が前向きに働けるよう、自主性が育てられる環境整備を行ってきました。その取り組みの1つとして、「自ら考え、自ら行動する」ことを目指して、店舗や本社など事業所を横断した公募制のプロジェクトを実施しています。現在は「マルイミライプロジェクト」「多様性推進プロジェクト」「健康経営推進プロジェクト」の3つのプロジェクトに加え、2018年からは新たに「サステナビリティプロジェクト」がスタートしました。

 公募制のプロジェクトは、社員が発信することで草の根的に広げていきたい活動に効果的です。1年ごとにプロジェクトメンバーを入れ替えることによって、知見を蓄え、自主性が備わった社員をアメーバ的に増やして、企業文化の構築を図っています。メンバーは、応募理由などを書いたレポートを提出し、選考されます。


株式会社丸井グループ
健康推進部 部長 小島 玲子 さん(産業医)

 そして、各プロジェクト活動をサポートするために、管理職から成る各推進委員会を設けています。委員会は方針を決めるのではなく、各プロジェクトの提案に対して、知識や経験を生かして助言したり、関連部門への根回しや交渉事を引き受けたりするなど、施策を後押しすることが役割です。

 16年に立ち上げた「健康経営推進プロジェクト」では、定員50名に対し5倍以上の応募がありました。本プロジェクトは、「2050年『わたし、健康!』と言える人を100%にする」をビジョンに掲げ、メンバーが知識やアイデアを持ち寄って議論します。その学びを生かして、事業所ごとにプロジェクトメンバー自身が企画・立案し、健康づくりの施策を展開していることが特徴です。たとえば、▽毎日のストレッチの実施▽バランスボールの導入▽会議前のマインドフルネス瞑想の実施▽ショップ対抗のウォークラリー▽3時のラジオ体操の実施▽補食コーナーの設置――など、社員の「やりたい」という気持ちから生まれるさまざまな施策が実現しました。

 また、役員や部長、店長などの管理職に対しては、自身と周囲の人や組織の幸せを高めることのできる、活力あるマネジメント層の養成を目的としたレジリエンスプログラムを実施しています。このプログラムは、①身体(食事・睡眠・運動)②情動③精神性④頭脳――の4つの活力を高める、約1年間のプログラムです。まずは管理職自身がアクションを周囲に広めていく効果を期待しています。このように社員が企画する施策と管理職の意識改革の両面から理解醸成と活動の拡大を図っています。

 17年からは、3つの公認プロジェクトが共催して、「共に創ろう、みんなの『しあわせ』」をテーマに、社員向けのイベント「インクルージョンフェス」を開催。それぞれのプロジェクトのテーマである「マルイミライ」「多様性」「健康」に基づき企画・出展し、健保組合もブースを出展しました。▽瞑想効果が見えるメガネ体験▽マインドフルネス講座▽車いすの試乗▽パラスポーツの体験ブース▽社外の多様な価値観に触れるパネルディスカッション▽太極拳体験▽有機野菜の販売――など、意識改革と多様性を体験、体感できる内容になっています。

 このイベントには、社員の3分の1にあたる1700人ほどが参加しました。企画したメンバーは、イベントを通して成功体験や他者との共感を得ることによって、人として成長することを期待しています。こうした経験は、本来の職場で仕事をする際にも、自信につながっていると感じています。

──健康経営銘柄および、健康経営優良法人2018(ホワイト500)への認定についてお聞かせください。

丸井グループ ▼

 丸井グループの健康経営は、健康を通じて人と組織の活性化としあわせにつなげることが目的です。自分たちの取り組みの方向性が社会の求める方向性と合っているかを確認するために、健康経営銘柄の調査に回答しています。

 今回、健康経営銘柄に選定された際の大きな評価ポイントは3つあると考えています。①社員が主体となって、健康づくりに取り組んでいること②健康経営を福利厚生やCSRなどの一環ではなく、経営戦略の1つであると明文化していること。また推進体制がしっかりしていること③データを活用して効果を数値で「見える化」していること――。健康経営における効果を数値化するのは難しいというのが一般的ですが、社員は健診や人間ドックを自前の健診機関で受診しているので、長期にわたる健康データを保持しています。そうしたデータをもとに、生活習慣と生産性の関係性などを分析しています。

データ分析①「食事と生産性」・・・食事の量や内容に気をつけている従業員は、仕事への取組み姿勢が前向きで、職場でのコミュニケーションが良好

データ分析②「睡眠と生産性」・・・よい睡眠で疲れがとれている従業員は、仕事への取組み姿勢が前向きで職場でのコミュニケーションが良好

──現状抱えている課題などはありますか。

丸井グループ ▼

 今後、社員の高齢化が進んでいきますので、その人たちに対する健康維持・増進や意識改革は課題の1つです。

 また企業文化が変わりつつある一方で、健康と仕事を切り離して考えている層もまだまだいます。健康診断の良し悪しだけでなく、残業時間の短縮や十分な睡眠時間の確保、朝食をしっかり取るといった習慣の重要性をより多くの社員に理解してもらい、生産性の向上につなげたいと考えています。そこで、健康という要素が仕事のパフォーマンスの発揮にどれだけ影響しているかを可視化するには、どういうデータが効果的なのか、現在模索しています。理解者を増やすことで、企業文化として根付かせたいと思っています。


丸井健康保険組合
常務理事 飯住 宗広 さん

健保組合 ▼

 グループ全体で健康経営の推進体制が整ったことによって、健康管理委員(管理職)やウェルネスリーダー(女性社員)など既存の組織体制も、連携がうまくいくようになり、ポピュレーションアプローチが進んだと感じます。

 健康経営の課題の1つとして取り上げられる女性特有の健康課題に対応するために、50名ほどのウェルネスリーダーが「女性の健康検定」を受験し、合格しました。こうした活動は、基本的な知識や情報を取得することによって、自身の健康だけでなく、会社の女性スタッフの相談や女性が働きやすい職場づくりに役立てることが狙いです。

丸井健康保険組合  広報誌SALADの雑誌

 健保組合でも高齢化による影響は懸念しています。生活習慣病の重症化予防などの働きかけを引き続き徹底していきたいと思います。また、健康経営プロジェクトのメンバーなどが中心となって実施する各事業所の健康づくりの施策を紹介するなど、広報誌の制作にも力を入れています。どうしたら読んでもらえるかを考えて、わかりやすく目に付く広報を実践しています。

株式会社丸井グループ 取締役専務執行役員CSO・CHO 石井 友夫 さん
「10年以上かけてようやく、社員が自主性をもって取り組む風土が根付いてきました」

株式会社丸井グループ 健康推進部 部長 小島 玲子 さん(産業医)
「健保組合や人事部や産業保健職ではなく、社員が主体となって健康づくりを企画・推進しているところが大きな特徴です」

丸井健康保険組合 常務理事 飯住 宗広 さん
「企業の経営戦略の1つに盛り込まれたことによって、健保組合が実施する保健事業にも相乗効果が表れています」

健康コラム
KENKO-column