HOME > 健康コラム > 企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~ > アクサ生命保険株式会社

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

アクサ生命保険株式会社

健康経営の普及啓発と社員の健康増進の取り組みが連動

アクサ生命保険株式会社は、社員自らが心身ともに健康で健全に働ける会社を目指して取り組むとともに、生命保険会社としての社会的責任を果たす上での重要な施策として、健康経営の普及啓発活動を推進し、2017年から4年連続で「健康経営優良法人・大規模法人部門(ホワイト500)」に認定されている。健康経営の普及啓発の取り組み等について、アクサ生命保険HPM統括部長の笠原芳紀さんに話を聞いた。また、社員の健康増進の取り組み等については、同社C&B/HRオペレーションCOE部長の時政豊さん、統括産業医の柿沼充さん、HRオペレーションウェルネス推進マネージャーの大前敬美さんに説明を、アクサ生命健康保険組合常務理事の加藤俊明さんにコメントをいただいた。

【アクサ生命保険株式会社】
設 立:1994年7月22日
本 社:東京都港区白金一丁目17番3号NBFプラチナタワー
代表取締役社長兼CEO:安渕聖司
従業員数:7,829人

──社内の健康経営はラボラトリー


アクサ生命保険HPM統括部長
笠原 芳紀 さん

笠原さん ▶

 当社は、社会的使命という位置付けで、企業経営者、地域社会への「健康経営」の普及啓発、実践支援、職域の社員の健康リテラシー向上に向けた啓発活動等に取り組んでいます。

 企業に対する健康経営の普及啓発の取り組みは2014年から進めていますが、企業の方がたに健康経営をご案内するには、当社自らの実践が必要ということで、同時並行的に社内の健康経営を進めることとなり、15年4月に「健康宣言」を行いました。多くの企業では、自社の健康経営の取り組みが社員の健康増進や生産性向上につながり、それが会社の発展につながるという考え方だと思いますが、当社では、まず、お客様である企業の持続的な発展のための健康経営の取り組みがあり、そのための社内向けの健康経営の取り組みを進めてきた点が特徴です。

 健康経営の社内向けの取り組みとお客様向けの取り組みは連動しており、当社で効果が実証されたものは、お客様にも自信を持ってご案内できるという意味で、社内の健康経営は、お客様の健康経営を進めるためのラボラトリーという位置付けでもあります。

 当社CEOの安渕はCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)として、自身の取り組みや社員の健康について自らがメッセージを発信し、健康意識の向上を先導しています。

 健康経営を効果的・継続的に取り組んでもらうための法人向けサービスとして「健康経営サポートパッケージ」を提供していますが、その中の健康増進メニューである「アクサ健康スクラム」は、社内でも利用・実践しています。スマートフォンアプリ上で5人1組のチームを組み、参加者同士が励まし合いながら、食事、運動、睡眠といった健康づくりの習慣化を目指すもので、CEO自らがチームを組んでチャレンジし、その状況を社員に発信しています。こうした社内の健康経営の取り組みで得られた知見、経験値を、企業・団体への健康経営の普及推進活動に生かしていきたいと考えています。

 健康づくり自体は、企業や社員にとって目的ではなく手段です。企業としては永続的な発展が目的であり、そのためには社員が健康であることが重要です。社員にとっては、自分自身の人生の目標実現が目的であり、そのためには自分が健康であることが重要です。

 健康経営に取り組む企業においては、こうした観点で、社員の健康づくりを会社の経営課題と位置付け、会社の施策として、社員を支え健康づくりを進めていくという思いを、社員に伝え、理解してもらうことが大切だと思います。

──運動・食事・メンタルヘルス・がん対策が柱


左から、アクサ生命C&B/HRオペレーション
COE部長 時政 豊 さん、
統括産業医 柿沼 充 さん、
HRオペレーションウェルネス
推進マネージャー 大前 敬美 さん

時政さん ▶

 アクサ生命は18年に行動変容(健康習慣)アンケートを実施し、社員の生活習慣の傾向から課題を特定しました。その上で、「運動」「食事」「メンタルヘルス」「がん対策」の4本の柱を基に、健康増進施策「アクサ・ウェルネス・プログラム(AWP)」を策定し、社員のヘルスリテラシーの向上や身体的・精神的健康を目的としたさまざまなアクションを実施しています。

 19年1月には7つのアクション(①健康診断の早期受診・ストレスチェック受検の勧め、②健康診断二次検査、③特定保健指導、④禁煙、⑤長時間労働の抑制、⑥有給休暇取得、⑦個人の健康アクション設定)からなる「健康管理ガイドライン」を策定しました。この中で、再検査など二次検査が必要な場合は業務の一部とみなして必ず受診することとしたほか、特定保健指導も参加を義務付けています。また、20年1月から就業時間中の禁煙を就業規則に盛り込みました。

 さらに、管理職が「健康推進マネージャー」として、AWPに主体的に参画し、健康経営を推進しています。各部門の核となる管理職が旗振り役となることは非常に効果的です。

 とくに、社員の健康教育「Health KIOSK(ヘルスキオスク)」には、産業医をはじめ、マネジメント層が積極的に関与しています。

 これらの活動を評価していただき、17年から4年連続で「健康経営優良法人・大規模法人部門(ホワイト500)」に認定されています。経済産業省が作成した健康経営銘柄2020年の選定企業レポートでは、健康経営を進める企業の手本となっている企業として紹介されています。また、健康企業宣言東京推進協議会からは19年に「健康優良企業:金の認定」を受けました。

──オンラインで健康教育や産業医面談を実施

柿沼さん ▶

 18年から「ヘルスキオスク」を実施しています。毎月役員をゲストに迎えて産業医と健康についてのトークショーを行ったほか、インストラクターによるストレッチを同時に行うことで、社員参加型セミナーを実現し、好評を得ました。

 20年1月からは、いつでも聴講できるよう、動画を撮影、配信を開始しました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い在宅勤務へと働き方が変わり、動画撮影が困難となったことから、4月からWeb会議ツールを活用したオンラインセミナーに切り替えました。

 緊急事態宣言中は産業医の新型コロナウイルス・感染予防についての情報提供や在宅勤務中の不調に対する保健師によるストレッチとカウンセリング相談窓口の周知を毎週実施しました。その結果、20年6月実施のストレスチェックでは、コロナ禍にもかかわらず高ストレス者が減少しました。20年5月実施の行動変容(健康習慣)アンケートでも「経営者は社員の健康づくりに熱心だと思う」と回答した割合は6割から7割へと増加しました。

 また、健康面で不安を抱える社員への産業医面談もオンラインにシフトしています。オンラインによる面談は、地理的な制約から解放されることや本社産業医と社員との間に親近感が醸成されること、短時間で密度の高いカウンセリングが行えることなどから、社員からはとても好評価を受けています。

 とくにこれまで課題であった、全国の営業現場の管理職をはじめとする多くの社員の健康に関するリスクに統括産業医が直接介入できることは、大きなメリットといえます。

──全国の拠点での取り組み強化が課題

大前さん ▶

 当初、AWPの取り組みは本社中心で進めており、全国拠点での展開が課題となっていました。このため20年はさらに多くの拠点への取り組みを強化しています。具体的には、管理職が「健康推進マネージャー」となり、KPI(重要業績評価指標)の達成や管下社員の健康づくりを積極的に行っています。23年中の達成に向けた5つのKPI(①定期健診受診率100%、②二次健診受診率100%、③特定保健指導実施率55%、④喫煙率20%、⑤ストレスチェック実施率90%)を策定し、進捗結果を社内外に発信することとしています。

 また、地方拠点を選定し、拠点ごと健康診断データを分析して課題を特定、主体的に課題に応じたアクションを実施しています。このほか、CHOが健康アクションの好事例を表彰する、「CHOアワード」を創設、社員や組織が積極的に応募できるような環境を整えているところです。

 社員がより健康に対する意識を高め、自身の健康づくりはもちろんのこと、お客様やビジネスパートナーの方がたに、健康や健康経営に関するより良いアドバイスや情報を提供できるようAWPのコンテンツのさらなる充実を図っていきます。

アクサ生命健康保険組合 常務理事 加藤 俊明 さん

 アクサ生命健康保険組合は、アクサ・ウェルネス・プログラムをサポートし、人生100年時代におけるアクサ生命の社員のキャリア形成や人生のライフプラン実現を、保険給付だけではなく、健康づくりや疾病予防のための施策を通じてサポートすべく、コラボヘルスに取り組んでいます。アクサ生命は、農商務省の初代労働課長として健康保険法を立案し、1934年に前身の日本団体生命の創業に尽力した膳桂之助氏の精神を受け継ぎ、安渕社長自らがCHOとして社員の健康づくりの陣頭指揮を執り、さらに自社の知見をラボとして、社員だけではなく、顧客に対しても、健康経営普及啓発を行っています。社員やその家族の健康を経営的な視点で考え、戦略的に実践する鍵は、まさに企業と健保組合が両輪となって推進するコラボヘルスにあるとの意を強くしております。

 当組合では、従来からの特定保健指導等のほか、以下のような施策を会社と一体となって実施しています。

①「がん検診」を社員が無料で受けられるよう健保組合が全額費用補助を行い、会社の行う法定健診とあわせ「総合健診」として実施

② 健診の結果、再検査等に該当した場合に、その受診を促すため、二次健診費用補助を2020年からスタート

③ 会社の行う「がん対策」をサポートするために、2019年7月から「オンライン診療による禁煙プログラム」を新た加え、喫煙の新型コロナウイルス感染症の重症化に及ぼす影響も指摘されていることから、無料で受けられる期間を延長

④「糖尿病の発症・重症化防止」を目的として、健診結果からその予測を行い、該当者には生活習慣の改善指導を実施

健康コラム
KENKO-column