対談・イベントレポート
イベントレポート
あしたの健保組合を考える大会
皆保険制度の維持に向けて
健保連大阪連合会主催の「皆保険制度の維持に向けて あしたの健保組合を考える大会」が3月30日、ホテルモントレ大阪で開催された。冒頭の開会あいさつで、大阪連合会の堀精宏副会長(パナソニック健保組合専務理事)は、「毎年1兆円規模で増え続ける医療費をどう抑え、誰がどのように負担し、皆保険制度をいかに維持していくかは世界が注目する課題であり、健保組合の課題解決の重要なポイントとなる」と訴えた。
大会前半では、朝日放送エグゼクティブアナウンサーの道上洋三氏が「パーソナリティ奮闘記-午前3時起床!38年目の元気」の演題で講演を行い、「『歩く』『走る』で下半身を鍛え、目で見て、耳で聞き、肌で感じたものを、言葉にして話すことを毎日欠かさないことが大事。朝の雑談で10歳は若返る」と述べるなど、軽妙なトークで会場を沸かせた。大会後半では、自民・公明・維新の党の各議員がパネルディスカッションに臨み、皆保険制度を維持していくために必要な視点や政策について、多様な意見や見解が示された。
閉会のあいさつでは、健康保険組合連合会の白川修二副会長が「私たちは常に正論を述べている。ただ正論がすべて法律になるとかというと、そうはいかないのが現実。ただ、正論は言い続けていかなくてはならない」と述べ、参加者の士気を高め、大会を締めくくった。
【パネルディスカッション】
皆保険制度の維持に向けて あしたの健保組合を考える
コーディネーター: | 国際医療福祉大学大学院特任教授 / 和田 勝 氏 |
パネラー: | 自民党 衆議院議員 / とかしき なおみ 氏 |
公明党 衆議院議員 / 伊佐 進一 氏 | |
維新の党 衆議院議員 / 松浪 健太 氏 |
介護サービス費は年平均6~7%増加し、医療費は2~3%ずつ毎年増加しています。そして、少子高齢化が進み、医療と介護にかかわる国民の税負担は増え、保険料も増加し、国民の不安は増すばかりです。健保組合は、日本が世界に誇る皆保険制度の中心的かつ先導的な役割を果たしてきましたが、その健保組合もまた、大きな試練に直面しています。そこで、これからの日本の医療と介護の制度について、どのような仕組みや考え方で臨むことが必要か、先生方のお考えをお聞かせください。
私たちは今、保険料と税金で医療と介護の制度を支えていますが、これだけではもう支えきれない状況にあります。そろそろ発想の転換が必要な時期に来ているのではないでしょうか。私たちは、「高齢化社会=悪いこと」のように捉えてしまう傾向にありますが、まず、この意識を変えていく必要があると思います。
健康長寿は、私たちが皆保険制度を手にし、医療と介護の制度を整えてきた結果なのですから、素晴らしいことだと捉えるべきです。実際、日本の医療は世界でも評価が高く、今、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、トルコ、メキシコなど、10カ国と医療保険制度の分野の協定書が結ばれており、こうした国々から日本の医療に関する情報を教えてほしいとの声があがってきています。以前、WHOに行った際、役員の皆さんに「日本から何を学びたいですか?」とお尋ねしたら、「なぜ日本人が健康で長生きなのか、その秘密を知りたい」との回答をいただきました。私たちが「大きな課題」として捉えている高齢化社会は、世界では高く評価されているのです。
私はここにこそビジネスチャンスがたくさんあると思っています。つまり、日本人がなぜ、健康で長生きなのかを医療情報として世界に発信するのです。保険料と税金だけで今の制度を維持しようとする考え方ではなく、今まで培ってきた健康長寿に関する情報を商品として世界に売り、その収益で今の制度を支えていくという考え方に変えていくことが重要だと思っています。
私が重要視しているのは、国民のマインドの持ち方です。例えば、医療や介護に関して、保険料の支払いが100円でも上がると、多くの皆さんが「100円も上げるのか」と憤慨されます。
医療や介護は、そもそも、本来の価格から大きくディスカウントされているものなのです。つまり、医療や介護がいかに価値あるものであるかをご理解いただき、病院に行くことや介護を受けることを常態化しないマインドを、国民の皆さんにもきちんと持っていただくことが大切だと考えます。
また、今の医療と介護の制度は、複雑になりすぎていると思います。国民が理解しやすい制度に再編成していくことが大切です。例えば、高齢者の住まいには特養や老健などいろいろあります。認可施設や民間の老人ホームなどに分けていけばさらに複雑になります。これからは在宅介護が増え、訪問診療の比重が高まっていくと思われますから、「住まい」とそれに対する「外付けのサービス」というような、分かりやすい整理をしていくことが必要ではないでしょうか。
時代は、人口も労働者数も右肩下がりです。そして日本の高齢化率がいかに高いかはご承知の通りです。したがって、政治も右肩下がりの時代に沿ったものにしていく必要があります。年金の構図と同様、現役世代に負担を強いていくだけのやり方ではもはや成立しません。国民の納得感を得るために、私たち政治家は、現在の有権者のみならず、未来の日本人に対しての責任をどのように果たしていくのかを明確にする必要があります。最近、よく言われる「世代会計」という考え方をしていかないと、いつまでたっても、現状の改善はできません。つまり、公費が協会けんぽや国保に投入され、健保組合の皆さんが割を食っている感がなくならないということです。
なお、年金に関しては、そのときの現役人口の減少や平均余命の延びに合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みであるマクロ経済スライドが取り入れられています。マクロ経済スライドは物価や賃金に連動しているものですが、運用に対してもこれを適用させるような仕組みが、これからは必要になってくるのではないでしょうか。そのときの政治の意思といかに離れた仕組みをつくるかが重要です。政治の意思と離していかないとどこが政権を取ろうが、やはり国民の皆さんに負担がいくことに変わりはありません。
そして、これからの時代、自治体がどんどん消滅していくといわれていますから、道州制を取り入れて、看護師の配置基準や病院の面積要件、あるいは一部の診療報酬といったものを、それぞれの地域で工夫をして変えていくような仕組みがあってもいいと思います。
国や保険者あるいは地方自治体は、それぞれの立場で医療費の適正化、効率化に取り組んでいますが、それでも医療費は3%近い伸びを続けています。こうした状況のなか、日本の皆保険制度を将来にわたって維持していくために、どのような視点や政策が必要かご意見をお聞かせください。
わが国は、医療費の負担がだいぶ増えて、財政問題を引き起こしていますが、こうした事態は海外ではあまり例がありません。例えば、北欧は医療費の負担はゼロですが、日本のような財政問題は起きていません。この差は、もちろん高齢化の問題はありますが、それ以外にも、日本人の甘えのような構造があるように感じます。つまり、日本人は、一度手にした公共サービスは絶対に手放さず、常にバージョンアップを望む傾向にあります。こうした意識では、医療費の負担は増える一方です。
これを避けるためには、皆保険制度という素晴らしい制度に甘えすぎないためにも、皆保険制度の対象となる病気と、自分で治すべき病気をきちんと定義することが重要だと思います。例えば、風邪は病気に該当しません。風邪は、薬局に行き、薬剤師のアドバイスを聞いて、OTC医薬品を服用すれば十分に治ります。東京医科歯科大の川渕孝一教授によれば、国民の皆さんが風邪をひいたときに、通院することなく、OTC医薬品で対応した場合、1124億円もの医療費を削減できるそうです。ちょっとした体調不良でも同様にOTC医薬品で対応すれば、7000億円くらいは削減できるとされています。また、ジェネリック医薬品については、2009年から2013年の間で、約257億円の財政効果がありましたが、それでもまだ先進国のなかで、日本におけるジェネリックの使用率は他国に比べて低いので、これについても、積極的に推奨していく必要があると考えます。
皆保険制度を維持していくためにも、日本の国民は医療費を減らす義務があるということを認識しなくてはなりません。私たち政治家も、国民に理解してもらえるようにしっかりと訴えていく必要があると思います。
医療費の増大にどう対応するかは、限られた資本をどう割り振っていくのかという議論にもつながり、常に倫理的な側面も議論になります。アメリカの公的医療保険制度はメディケアとメディケイドしかありません。メディケイドは、低所得に対して、医療保険を提供しているものです。
実は、オレゴン州で、メディケイドの医療保険から費用対効果の低いものを除外しようという議論があったそうです。例えば10万ドルあるとして、その10万ドルで1人を救うのか、それとも100人の妊産婦を救うのかという議論です。ちなみに、こうした考え方はイギリスではさほど珍しいことではありません。イギリスでは、高齢者になると人工透析は保険の対象外です。
ただ、こうした議論で、私が必ず思うことは、最大多数の最大幸福というものを医療に当てはめていいのかということです。最大多数の最大幸福というのは、あくまで多数者の議論であって、少数派を排除しているからです。そういう意味で、倫理的に考えると、本当にそれが社会正義にかなうのかどうかは、常に保険の世界では考えなくてはならないことだと思います。
また、病気になるリスクが低い人たち、そして高所得者に、社会保険をどう納得していただくかが重要です。こうした人たちの納得を得ないまま、制度改正を推し進めるのは、どこかでつまずくと私は思っています。取れるところから取ればいいというのは、あまりにも乱暴すぎるので、もっと丁寧に議論していく必要があると思っています。
私は、これからはタブーに踏み込んでいく必要があると考えています。つまり、皆保険制度を守るために、われわれは最低限の医療がどこにあるのかを見据えていかないといけないと思っています。例えば、先進国のなかでも65歳を超えると、人工透析の保険がきかないという国があるわけで、われわれが常識だと思っている常識は日本だけの常識であることが多い。最低限の医療であっても、まともな医療や介護は十分に行えます。先般の予算委員会で私は、リビングウィルの制度化を提唱しました。年間で約100万人が亡くなりますが、亡くなるまでの1カ月間で100万円がかかるとされています。そうしたお金が本当にQOLの向上に役立っているかということです。
私の祖母は「ボケたくない、寝たきりはいやだ」と申しておりましたが、晩年は胃ろうして、胃切して、認知症となり、意識も朦朧としている状態が続きました。私は祖母に対して申し訳ないことをしたと思っています。もしリビングウィルをしっかりと取っていれば、もう少し、尊厳のある誇らしい祖母の在り方があったのではないかと思うのです。したがって、リビングウィルの制度化は、本人のためでもあり、それが結果として医療費の削減につながるのであれば、やはり議論していく部分だと思っています。
また、誤解のないようにご理解いただきたいのですが、私は、生活保護を受給されている皆さんは全員ジェネリックにしたらどうかと予算委員会で言ったこともあります。海外の保険などでは、ジェネリックが出ているものについては保険料を安く抑えるという仕組みがあるくらいですから、生活保護の受給者全員をジェネリックにしても、まったく差別にはならないと思います。
マインドを変えるというのは、これくらいの勢いでわれわれが持っている常識を変えていくことだと私は思っています。こうした明確なメッセージを、健保組合の皆さんからも発信していただけるとありがたく思います。
一昨年、健保組合の1カ月の1人のレセプトの最高額が1億1200万円という事例がありました。それによって、その患者さんの命を守っている。これぞ健康保険ということかもしれませんが、他方、より自己管理で対応可能なものについても相当の医療費が使われています。そういうなかで、難病対策法あるいは再生医療法が成立しました。いずれも病気で悩んでいる国民にとっては朗報ですが、医療費の負担の問題が絶えずあるのも事実です。
こうした状況のなかで、健保組合は長きにわたる皆保険制度の歴史のなかで、先導役として、またオピニオンリーダーとしての役割を果たしてきました。同時に1980年代半ばからは、老人保健拠出金制度をはじめとした支援金の負担者として、皆保険制度を支える主体的な役割も担ってきたわけです。しかし、現状を見ると、本来は被保険者とその被扶養者の健康維持、あるいは医療に充てられるべき保険料のうち、すでに4割強が支援金などに充てられています。その結果、多くの健保組合が赤字財政を余儀なくされ、保険者としての存続が厳しい状況に直面しています。一方で、健保組合に対する先導的かつ主体的な役割を期待する声も強いのが事実です。こうした現状において、これからの健保組合に対する期待や注文などがあれば、お願いします。
今国会では、医療保険制度改革関連法ということで、健保組合の皆さんに関係のある法案が出てきます。アベノミクスも賃金を上昇させていこうと頑張っていますが、一方で健保組合の皆さんには大変ご迷惑をおかけするような、マイナスに働いてしまう力も使わざるをえません。逆に言えば、それくらい追い詰められている状況でもあることをご理解いただきたい。
健保組合も約8割が赤字と言われています。かなり厳しい状況で、解散して協会けんぽに鞍替えしようかという動きも出てきていると伺っています。これをどう改善していくべきかについてですが、医療ツーリズムを専門とされる方のお話によると、やはり一番大切なのはデータだとのことでした。つまり、この方法で、どれだけの効果があるのかというエビデンスがそろって、学術的に証明できると、国際社会のなかで競争力が出てくるとアドバイスをいただきました。そのときに、私は、健保組合はデータの宝庫なのではないかと思いました。医療費削減、健康維持のために、さまざまな形で、それぞれの組合が取り組みされていると思いますので、商品になるようなデータづくりをしていただき、健保組合自身も、お金を生んでいく仕組みや方法を考えていくこともできるのではないかと考えています。
すでに取り組みを開始されているところも多いかと思いますが、健保組合の皆さんには、これからデータヘルスに取り組んでいただくことになります。アメリカでも民間主導で疾病管理が行われていますが、アメリカがとっているデータは、すでに発症した病気の重症化をいかに防ぐかという観点がメインなのだそうです。
日本はそれよりも前段階の定期健診で早期に発見するなど、軽症のレベルで介入できることが特徴です。つまり、リスクが高まってくる30~40歳代を対象に、しっかりと網の目をかけることができるのは素晴らしいことだと思っています。データヘルスによって、どれくらいの効果があるのかといった指標も必要だと思いますが、健保組合や特定の企業でできるものではないので、これは国として、どうやって統一的な指標を検討していく必要があります。
また、レセプト情報や、特定健診あるいは保健指導の情報を持っているのは健保組合の皆さんをはじめとする保険者だけですので、そういう意味でもっと多くのことができるのではないかと思っています。例えば、今の医療提供体制の議論にもっと積極的に参画していくことも可能ではないでしょうか。4月から、保険者協議会というものが法定化されます。つまり、地域の医療提供体制をどうするかという問題は、今まで国保が中心でしたが、4月からは被用者保険も法定化されて参画できるようになります。また、地域包括ケアシステムの議論に、保険者の皆さんも入るといったことも、制度上確定されていますので、ぜひ、今後こうした大きな観点から積極的に参画していただきたいと思います。
健保組合の皆さんの意見や要望を通すためには、皆さんにも、ある程度、動いていただく必要があります。何かを動かすときというのは、真剣に体を張らないといけない。ですから、先ほども申し上げたように、リビングウィルの制度化に声をあげていただくとか、ジェネリックも、「なんとなく使いましょう」ではなくて、何か一線を画した仕組みをつくっていかないと、立ち行かなくなります。「もう本当に払えません!」というアピールを、これまで以上にしていただく時期なのだと思っています。
医療保険制度関連の改正案の話も、皆さんには決していい話ではないですよね。したがって、「われわれも頑張りますから、その分、国も医療費を真剣に考えてくださいね」というアピールをすることが大事です。
私は、民間の感覚は、すごく大事だと思っています。例えば、皆さんが直面している課題を訴えるキャラクターに喪黒福造を起用するセンス、私はすごくいいと思います。民間の皆さんからしか生まれないセンスです。われわれも協力いたしますので、どうぞ皆さんも大胆に訴えていってください。
先生方、ありがとうございました。せっかくの機会ですので、先生方に聞いてほしいことなどがあれば挙手をお願いします。
私どもは同種同業の事業所で組織している総合健保です。先ほどのお話にもありましたが、保険料収入の5割近くを高齢者の納付金・支援金に拠出しているというのが実態です。自健保の医療費も5割を超えているという、非常に厳しい状態であることから、2011年度以降4年連続して、保険料率を引き上げています。その結果、協会けんぽよりも高い10.4%という状況です。総合健保では、「協会けんぽよりも料率が高いのに、健保組合を存続する意義があるのか。解散も視野に入れて検討したらどうか」という声が聞こえているところもあります。私どもとしましては、協会けんぽにはできない、健保組合であるがゆえの、事業主との距離が近いというメリットを最大限に生かした、きめの細かい保健事業が展開できることに一つの意義があると自負しています。
しかし、今、国会に提出されております医療保険制度改革についても、残念ながら、私ども健保組合が要望していた高齢者医療制度の改革、あるいは負担構造の見直しなどにはほとんど触れられておらず、国保の財政基盤強化が最優先課題とされています。しかもその支援をさらに健保組合に負担をさせるような中身になっていると思います。
団塊の世代がすべて前期高齢者に移行するなか、今後、医療費が増えていくのは明らかです。今のまま、現役世代の保険料負担で高齢者医療制度を支えていくことは不可能です。そこで、1つお願いです。2017年4月に先送りされた消費税率引き上げ分の財源を高齢者の医療費に充てるなど、現役世代の負担軽減を図るとともに健保組合に対するさらなる支援策を講じていただくよう切望いたします。どうぞ宜しくお願いいたします。
当健保組合も、ご多分に漏れず、大変厳しい財政状況です。2012年度に当時の7.5%から9.5%に料率を2%引き上げました。それに加えて、付加給付を削減、直営保養所の閉鎖、健保組合支部の廃止、健保診療所の閉鎖、疾病予防費の削減、事務所費削減のための事務所移転など、支出削減を断行してきました。健保組合全体を見ても財政状況が厳しいなか2015年度からデータヘルス計画を実行し、医療費の適正化の取り組みを強化しようとしているところです。
社会保障費、とりわけ医療費の増大化は大きな課題です。そのなかでも最優先課題は、歳出の削減ではないでしょうか。本日、先生方からお話を伺いましたが、本当にそうした方策だけで増税する医療費の抑制が達成できるのでしょうか。私は、自分の肌感覚として、はなはだ難しいと思っております。やはり、さらに踏み込んだ抜本的な改革、つまりは高齢者の患者さんの自己負担割合に関しても年齢や制度で区分せず、経済力に応じて公平に負担するといった方策が必要だと思います。現在の1割負担から2割負担にするなど、具体的な検討に入るべき時期なのではないでしょうか。高齢者の投票数が多いという理由で、なかなか声に出しづらいことかもしれませんが、分かりやすく説明すれば、日本の国民には理解してくれると私は信じております。ぜひ、医療費の削減、抑制、そこから目をそむけず、実効性のある策を検討していただくよう、特に野党の先生方には、政府与党への強いアプローチをお願いしたいと思っています。
会場からいただきました悲鳴とも言うべき、ご提案について、先生方から一言ずつお願いします。
ごもっともなご意見です。特に高齢者の医療費をどうしていくのか、これにしっかり切り込んでいかないと、制度や健保組合も持たないと私も実感しています。
日本では、引退したあとも資産が増えており、高齢者の皆さんには、しっかり社会に戻していただけるような仕組みをつくる必要があります。
大阪の場合は、保険料率が全国と比べても高いと伺っています。今回の法案では、全面総報酬割実施により生じる2400億円の国費から、1700億円は国保の財政支援のために投入することになっています。そして残りの700億円のうち600億円は高齢者の拠出金の負担軽減に、残りの100億円は、健保組合の負担軽減のために確保したわけですから、これはまず1歩前進と考えてもよいのではないでしょうか。
ここから、これをどう拡大していくかというのが今後のわれわれの闘いになるではないかと思っています。
高齢者の2割負担については、そう簡単なことではないと思っています。1970年代に無料化となり、自治体で始めたことが、いつのまにか国が管轄するようになったわけです。この無料化を、いろいろな議論を経て、最終的に均一負担に戻すまでに30年かかりました。無料化から戻すだけで30年かかるわけですから、1割を2割にするという抜本的な改革をするというのは、なかなか難しいことだと思います。ここは野党の松浪先生に頑張っていただきたいところではありますが、しっかりとした議論が必要な部分であるとも思います。
私は与党でもおそらく同じことを言うと思うのですが、消費税率引き上げによる財源については、高齢者医療に見える化して入れるべきだと思います。高齢者の皆さんに対する医療費のために、これだけ厳しい財政になっているという現状を、国民が理解しやすいという点では、非常に分かりやすいシンプルな政策だと思います。
今、20代の人口は、70代の人口の半分です。投票率が2分の1ということで、投票的には4分の1のパワーしかありません。そのために、この議論が進まずにいるわけです。次の参議院選挙から18歳まで引き下げられる可能性がありますが、ヨーロッパのある国では18歳以下については、親に投票権を渡し、子どもたちの未来のためにはどの政党がいいのかを親子で考えるそうです。したがって、日本も例えば12歳とか15歳くらいから投票権を与えて、親と一緒に考えて、親と一緒に投票所に行くようにしてもいいと考えています。18歳まで引き下げるだけで満足するのではなく、その先まで行けば、いかに日本の世代間の仕組みが狂ってきているかが分かるのではないでしょうか。また、こうしたことが医療に直結しないように見えて、本当の意味で世代間のバランスを考えていくいい契機になるのではないかと考えています。
貴重なご意見、ありがとうございました。