イキイキごはん
からだにうれしい薬膳料理を、中国料理・食養生研究家のパン・ウェイ先生がご紹介します。
今月7日は立冬。漢方ではこの日からゴボウやキクラゲ、キノコ類、海藻類など、黒の食材に分類されるものを多めに摂るように伝えられてきました。なかでも今が旬のキノコ類は免疫力を高めてくれるお勧めの食材です。気温が下がってくるとからだを動かすことが億劫になりますが、キノコ類は食物繊維も豊富なので、冬場の運動不足による便秘の解消にもぴったりです。今月ご紹介する料理では椎茸を使いましたが、舞茸やエリンギ、シメジを使っても楽しめます。
キノコに加えてこの時期の私の楽しみは新そば。中国では冬場に血管や血液に関連する病気が起こりやすくなると考えられてきました。寒さで血管が収縮しがちなことや、乾燥に加えて水分補給が少なくなり、血液が濃くなりがちなことが原因とされていますが、そばはミネラルが豊富なだけではなく、血管を柔らかくし、血液をサラサラにする作用があります。2、3カ月後の寒さのピークに向けてぜひ今から召し上がってください。
今回の料理では牛乳とバターをたっぷり使いました。免疫力を高め風邪を引きにくくするためには適度な脂肪も必要だからです。私は毎年本格的な冬を迎えるまでに適量の脂肪分を補給することにしています。
調理のコツは玉葱と椎茸を焦がさないように炒めること。焦げた匂いが繊細なそばの風味を損ねることがないよう気をつけましょう。

そばの実と200㏄の水(分量外)を小鍋に入れ、柔らかくなるまで10分程度煮る。
※茹でた麺で代用する場合は、さっと湯どおしする程度でよい
椎茸と玉葱を薄くスライスする。
鍋にバターと(2)の玉葱を入れて、弱火で色が少し変わるまで炒める。(2)の椎茸を加えて焦げないようにさらに少々炒める。
- ミキサーに(1)と(3)、鶏スープの素を入れ、牛乳を数回に分けて加えながらよく混ぜる。
- 食べる直前に鍋で少々加熱してから器に入れ、パセリとクコの実をのせる。
中国料理・食養生研究家。「季節と身体」をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、中国家庭料理・薬膳料理・中国茶の教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会、イベント等でも活躍。 http://www.pan-chan.com/
家庭薬膳は言葉の通り、中国では普段の食生活に根づいたものです。けして難しいものではなく、ややこしいカロリー計算も、難しい栄養学の知識もいりません。大まかに、「5色の食材を摂る」、「冷やさない」、「一物全体」という言葉を覚えておいて下さい。
まずまんべんなく5色の食材を摂ること。でも毎食気にすることはありません。夕食の献立を考える際に、朝食と昼食に洩れていた色を加えればいいのです。季節の色の食材は多めに摂ることも忘れないで下さい。たとえば仕事等で忙しくて1日で補えない場合、翌日多めに食べればいいのです。
中国でも「冷えは万病のもと」とよくいわれます。とくに冷え性の方は夕飯時の刺身や生野菜は控え目にして下さい。日本では夕飯から就寝までの時間が短いことが多いので、寝ている間にからだが冷えてしまいます。新陳代謝が悪くなり、睡眠中の細胞の回復や解毒を損ない、様々な病気の原因になります。
3つ目の「一物全体」とは、食材は一部だけではなく全体を食べよという意味です。青菜なら葉っぱや茎だけではなく根の部分も、肉も赤身だけではなく内臓類なども食べましょう。それぞれの部位にしかない栄養素があると考えられています。